判旨
憲法37条1項が保障する「迅速な裁判」に反する事態が生じたとしても、それのみでは直ちに上告理由となるものではない。また、「公平な裁判所」とは、構成その他において偏頗の惧れのない裁判所を意味する。
問題の所在(論点)
刑事手続における審理の遅延が、憲法37条1項の「迅速な裁判」を保障する規定に抵触し、独立した上告理由となるか。また「公平な裁判所」の意義が問題となる。
規範
1. 憲法37条1項の「迅速な裁判」の規定に反したとしても、他の方法により救済を求めることは格別、それ自体は上告理由を構成しない。2. 同項の「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所の構成その他において偏頗の惧れのない裁判所による裁判を意味する。
重要事実
被告人が刑事事件で起訴(昭和27年10月20日及び同年12月18日)され、第一審および第二審で有罪判決を受けた。これに対し弁護人が、審理の遅延等を理由に憲法37条1項(迅速な裁判、公平な裁判所)に違反するとして上告を申し立てた事案である。
あてはめ
本件において、起訴から第二審判決に至るまでの期間を検討するに、格別迅速を欠いた裁判であるとは認められない。また、裁判所の構成等に偏頗の惧れがあるといった「公平な裁判所」の趣旨に反する具体的な事情も記録上見当たらない。したがって、憲法37条1項違反の主張には理由がない。
結論
本件上告には憲法37条1項違反の事由は認められず、刑訴法408条により棄却される。
実務上の射程
本判決は、審理遅延のみを理由とする上告を否定する初期の判断枠組みを示している。後の高田事件(最判昭47.12.20)により、異常な遅延がある場合には免訴判決をなしうることが示されたが、本判決の「公平な裁判所」の定義(偏頗の惧れのない構成)は現在も基本的な理解として維持されている。
事件番号: 昭和25(あ)1989 / 裁判年月日: 昭和27年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成を持った裁判所を意味し、個々の事件につきその内容実質が具体的に公正妥当な裁判であることを指すものではない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決の量刑が不当であることを理由に、当該裁判が憲法37条1項に違反する「公平な裁…
事件番号: 昭和28(あ)42 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、主観的に裁判の内容が不公平であると思料される裁判所を指すものではない。また、実刑の言渡しをすることも憲法13条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bが、実刑を言い渡されたこと等に不服を抱き上告した事案。被告人側は、実刑の言渡しが憲法13条…