同一審裁判所が、共同主犯として起訴された甲乙両名を、はじめ分離して審理をなし、裁判所がかかわつたことによる公判手続を更新した後審理を併合したにとどまる場合において、甲については乙との共同正犯を認定して有罪としながら、乙については甲を有罪とした証拠が提出されなかつたときは甲との共同正犯を否定して無罪としたからといつて、必ずしも判決の理由にくいちがいがあるということはできない。
同一判決で甲被告人には乙被告人との共謀を認定し乙被告人には同一事実につき立証を尽さなかつたことによる無罪を言渡した場合と判決の理由のくいちがいの有無
刑訴法378条4号,刑訴法335条1項
判旨
共犯関係にある複数の被告人に対し、証拠関係の差異に基づき一方に共謀を認め、他方に証明不十分として無罪を言い渡すことは、判決に理由の食い違いがあるものとはいえず適法である。
問題の所在(論点)
刑事裁判において、同一の共謀事実に基づき起訴された被告人間で、証拠関係の差異を理由に一方は共謀を認め、他方は無罪とする認定を行うことが、判決の理由に矛盾を来すものとして許されないのかが問題となる(刑事訴訟法上の理由不備・矛盾の存否)。
規範
同一の犯罪事実について複数の被告人が共犯として起訴された場合であっても、各被告人に対する事実認定は、それぞれの被告人との関係で提出・取り調べられた証拠に基づいて個別に行われるべきものである。したがって、特定の証拠の証拠能力や証明力の違いにより、一方に共謀の事実を認め、他方にこれを認めないという異なる認定がなされたとしても、それが各被告人に対する証拠関係に適合する限り、判決に矛盾(理由の食い違い)は生じない。
重要事実
被告人Aおよび被告人Bが戸別訪問の罪で起訴され、第一審は被告人Aにつき被告人Bとの共謀の事実を認定して有罪とした。一方で、同一の事実関係について、被告人Bに対しては共謀を認めるに足りる証明が不十分であるとして無罪を言い渡した。これに対し、被告人A側が「共犯者間で認定が分かれるのは判決の理由に食い違いがある」として上告した事案である。
あてはめ
本件では、被告人Aについては第一審で挙げられた証拠によって判示犯行(共謀)を認めるに足りるとされた。対して、被告人Bについては、検察官が挙証手続上の理由により証明を尽くすことができなかったという事情が認められる。このように、被告人ごとに証拠の状況や証明の程度が異なる場合において、証拠が十分な被告人Aにのみ共謀を認定し、証拠が不十分な被告人Bを無罪とすることは、各被告人に対する証拠判断の結果として合理的である。したがって、被告人Bが証拠不十分で無罪となった事実をもって、被告人Aに対する事実認定を不当とすることはできず、理由の食い違いも存在しない。
結論
被告人ごとに証拠関係が異なる以上、共犯者間での認定に差異が生じることは適法であり、判決に理由の食い違いはないとして、上告を棄却した。
実務上の射程
実務上、共犯者の公判が分離されている場合や、証拠の提出状況・証拠能力が異なる場合に、共犯者間で異なる事実認定がなされることは「証拠裁判主義」の結果として許容される。答案作成上は、共犯者の認定との整合性を争う主張に対し、証拠の個別性の観点から反論する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)262 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事件の分離併合は裁判所の自由裁量に属し、共犯者であっても特別の規定がない限り証人として尋問することができ、その供述を証拠とすることができる。 第1 事案の概要:判決文からは具体的な事件の内容や公訴事実の詳細は不明であるが、被告人と共犯関係にある者について、事件を分離した上で証人として尋問し、その供…