共犯者甲に対する被告事件は、共犯者乙にとつて刑訴第九条の関連事件ではあるが、同第一〇条にいう同一事件ではない。
刑訴第九条の関連事件と同一〇条の同一事件
刑訴法9条,刑訴法10条,刑訴法11条,刑訴法339条1項5号
判旨
共犯関係にある者であっても、被告人を異にする場合には「同一事件」には当たらない。したがって、共犯者の事件が別の裁判所に係属していても、管轄の競合(刑訴法10条1項)は生じず、別個に審理・判決をすることが許される。
問題の所在(論点)
共犯関係にある複数の被告人が、それぞれ別の裁判所に起訴された場合、これらは刑事訴訟法10条1項の「同一事件」として、いずれか一方の裁判所でのみ審理されるべきか。
規範
刑事訴訟法10条1項にいう「同一事件」とは、同一の被告人による同一の犯罪事実を指す。共犯関係にあり、事実上の関連性が認められる事件(関連事件)であっても、被告人を異にする以上は、同条の「同一事件」には該当しない。
重要事実
被告人は、共犯者Aと意思を通じ、公職選挙法違反にあたる饗応を行ったとして泊簡易裁判所に起訴された。一方で、共犯者Aは、被告人と共謀したとされる同事件につき、富山地方裁判所魚津支部に起訴され、審理を受けていた。被告人は、共犯者Aの事件と本件が同一事件であることを前提に、簡易裁判所による審理・判決には管轄等に関する法令違反があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人はAと共謀して饗応を行った事実が認められ、Aは別の裁判所で審理を受けている。しかし、被告人とAは別人であり、刑事手続上はそれぞれ独立した被告人である。両事件は、いわゆる「関連事件」としての性質は有するものの、被告人を異にする以上、刑訴法10条1項の「同一事件」には当たらない。したがって、泊簡易裁判所が第一審として被告人を審理し、判決を下した手続に法令違反は認められない。また、被告人が異なり裁判所が異なれば、判決内容に差異が生じることも現行制度上当然に予定されている。
結論
被告人を異にする共犯事件は「同一事件」に該当せず、簡易裁判所が別個に下した判決は適法である。
実務上の射程
管轄の競合(刑訴法10条)の解釈において、客観的事件の同一性だけでなく、主体的側面(被告人の同一性)を重視する。共犯事件の分離公判において、証拠の採否や量刑に差異が生じることの正当性を基礎付ける判例として利用できる。
事件番号: 昭和29(あ)262 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事件の分離併合は裁判所の自由裁量に属し、共犯者であっても特別の規定がない限り証人として尋問することができ、その供述を証拠とすることができる。 第1 事案の概要:判決文からは具体的な事件の内容や公訴事実の詳細は不明であるが、被告人と共犯関係にある者について、事件を分離した上で証人として尋問し、その供…