判旨
第一審判決の証拠の標目に関し、一括して掲記する方法であっても、記録との対照によりどの証拠からどの事実が認定されたか明白であれば、証拠説明として欠けるところはなく適法である。
問題の所在(論点)
判決書において複数の犯罪事実を認定する場合、証拠の標目を各事実ごとに対応させて掲記せず、一括して挙示することは刑事訴訟法335条1項に違反するか。
規範
判決における証拠の挙示(刑事訴訟法335条1項)は、判示の犯罪事実を認めるに足りる証拠を特定して示せば足りる。必ずしも事実ごとに対応する証拠を細分化して掲記する必要はなく、記録と対照して、どの証拠によってどの事実が認定されたかが客観的に明白であれば、証拠裁判主義(同317条)の趣旨に反しない。
重要事実
被告人が自白の任意性等を争って上告した事案。第一審判決の証拠説明において、複数の証拠が各判示事実に個別に対応させる形ではなく、一括して標示されていた。被告人側は、このような証拠の掲記方法はどの証拠からどの事実を認定したかが不明確であり、証拠裁判主義および判決の理由不備(刑訴法335条1項、405条等)に当たると主張した。
あてはめ
本件の第一審判決における証拠説明を記録と対照すると、裁判所がいかなる証拠によって、いかなる事実を認定したかは明白に読み取ることができる。また、一括して挙げられた証拠の中に判示事実に反する部分が含まれている場合には、裁判所がその部分を採証しなかったものと解することが可能である。したがって、事実ごとに証拠を分類して掲示していないとしても、実質的な証拠の説明として不十分な点は認められない。
結論
本件の証拠掲記方法は適法であり、判決を破棄すべき理由(刑訴法411条等)には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
判決書の記載実務における証拠の簡略な掲示を認める射程を持つ。答案上は、理由不備や証拠裁判主義違反が問題となる場面で、判決の説示が記録との対照によって事実認定の過程を合理的に裏付けているかを確認する際の判断基準として活用できる。
事件番号: 昭和35(あ)1079 / 裁判年月日: 昭和35年9月2日 / 結論: 棄却
控訴審が第一審判決の法令の適用に誤りありとしてこれを破棄自判するにあたり、第一審判決の認定した事実に法令を適用したのみでその証拠を引用せずまたはその証拠の標目を掲げていないとしても、控訴審は第一審判決挙示の同一の証拠を援用した趣旨と解するのを相当とする。