判旨
不当に長く拘束された後の自白であっても、拘束前の自白内容を繰り返したにすぎないなど、拘束と自白との間に因果関係が認められない場合には、証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
不当に長い拘束の後になされた自白が、憲法38条2項および刑訴法319条1項により証拠能力を否定されるための要件、特に「不当な拘束」と「自白」との間の因果関係の存否が問題となる。
規範
不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)が証拠能力を欠くのは、その拘禁と自白との間に因果関係が認められる場合に限られる。先行する適法な手続下での自白と同内容を反復しているにすぎない場合には、因果関係は否定される。
重要事実
被告人Aは、昭和21年12月23日に勾留状が発付される前の段階で、検事の聴取に対し自白を行っていた。その後、被告人は相当期間にわたり拘束された。予審第4回訊問において、被告人は再び自白を行ったが、その内容は勾留前の検事聴取書における自白の趣旨を繰り返したものであった。弁護人は、この予審段階の自白が不当に長い拘禁後の自白に当たり違憲であると主張した。
あてはめ
本件における予審第4回訊問調書中の自白は、不当な拘禁が問題となる前の段階、すなわち勾留状発付前になされた検事聴取書での自白と同趣旨のものである。このように、拘束の影響を受ける前になされた当初の自白を単に繰り返したにすぎない事実に照らせば、当該自白と拘禁との間に因果関係は存在しないと認められる。したがって、自白の任意性に疑いはなく、証拠能力を肯定した原判決に憲法違反の点はない。
結論
不当な拘禁と自白との間に因果関係が認められないため、当該自白の証拠能力は認められる。上告棄却。
実務上の射程
自白排除法則の検討において、不当な拘留・拘禁がある場合でも、先行する任意性に疑いのない自白との同一性を根拠に、因果関係を遮断して証拠能力を認めるロジックとして活用できる。ただし、現代の刑事訴訟においては「不当に長い拘束」そのものが適正手続違反として厳格に評価されるため、先行自白との同一性のみで直ちに因果関係を否定することには慎重を期すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)424 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
記録を調べてみると被告人A、原審相被告人B、同Cは昭和二三年七月二九日逮捕され、原審相被告人D同Eは同月三〇日に逮捕され、原審第一回公判期日は同年一一月一六日であつて被告人等がその間即ち一一一日若しくは一一〇日間拘禁されていたことは明かであるが、被告人等は同年七月三一日には檢事に對して本件犯行を自供し次いで同年八月一八…
事件番号: 昭和24(れ)349 / 裁判年月日: 昭和28年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」とは、拘禁と自白との間に因果関係があることを要し、因果関係がないことが明らかな自白は含まれない。また、病状があっても審理に耐え得ると認められる限り、公判手続を停止しないことは適法である。 第1 事案の概要:被告人は強盗容疑で逮捕・勾留され、約11…
事件番号: 昭和24(れ)401 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
一 しかし被告人は同年七月七日檢事に對して本件犯行を自白し次いで同月二九日第一審公判廷においても自白しているのであつて、原審公判廷の自白も従前の自白を繰返したものに過ぎないのであるから右自白と拘禁との間には因果関係のないことが明かである。然らば原審が右自白を證據としたからといつて憲法第三八條第二項刑訴應急措置法第二〇條…