判旨
労働争議としての生産管理は、企業の所有権を侵害し、私有財産制度を否定するものであるため、正当な争議行為として認められず、違法である。
問題の所在(論点)
労働組合法上の正当な争議行為として「生産管理」が許容されるか。特に、私有財産制(憲法29条)と労働基本権(憲法28条)の調整が問題となる。
規範
労働争議において、労働者が使用者の意思に反して企業の施設、資材等を占有し、経営権を排除して業務を遂行する「生産管理」は、私有財産制度を基礎とする現行法制下においては、企業の所有権を侵害するものであり、正当な争議行為の範疇を逸脱する。
重要事実
被告人らは、労働争議の手段として、工場の生産設備や資材等を実力で占拠し、経営者の指揮命令を排除して自ら業務を運営する、いわゆる生産管理を実施した。これに対し、当該行為が威力業務妨害罪や建造物侵入罪等の刑事責任を負うか、あるいは労働組合法上の正当な争議行為として免責されるかが争われた。
あてはめ
生産管理は、経営者の所有権に基づく管理権を全面的に否定し、労働者が自ら経営を掌握するものである。これは、資本と労働の対等な交渉を前提とする労働争議の枠組みを超え、私有財産制度の根幹を揺るがすものといえる。したがって、労働基本権の行使といえども、他人の財産権を本質的に侵害する態様の行為は正当化されない。
結論
生産管理は違法であり、正当な争議行為として免責されない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
生産管理の違法性を確定させた重要な判例である。司法試験等の答案においては、争議行為の正当性を論ずる際、手段の相当性の限界事例として本判例を引き、所有権や経営権の侵害を理由として否定する論法が一般的である。
事件番号: 昭和27(れ)79 / 裁判年月日: 昭和27年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による生産管理は、争議の一手段としてなされたものであっても、労働関係における争議行為として容認し得ない。また、労働関係の当事者たる地位を失った者による行為は、憲法28条の保障の対象外である。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合の争議の一手段として、会社側の意に反して工場等の施設を占拠・…
事件番号: 昭和38(あ)2256 / 裁判年月日: 昭和40年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合員による組合活動であっても、その手段が暴行を伴うなど社会通念上許容される限界を超える場合は、当然に違法性が阻却されるものではない。また、争議行為を禁止する規定自体の違憲性は、当該暴力的な行為の違法性判断を左右しない。 第1 事案の概要:国家公務員である被告人らは、勤務時間内職場集会への参加…
事件番号: 昭和27(あ)4798 / 裁判年月日: 昭和33年5月28日 / 結論: その他
労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するためにとられた労働者側の威力行使の手段(いわゆるピケツト、ライン)が、諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には、威力業務妨害罪が成立し、したがつて、これを処罰することは、憲法第二八条に違反しない