原判決判断の骨子とするところは、結局被告人が参加した争議行為と称するものは当該労働組合の決議に基かず、ただ少数者の専断により敢行されたものである点、並びにその具体的な実行行為の点即ち第一審判決判示第三記載の如く、同被告人は外数名と共謀のうえ、電車の前方通路である軌道上に、或はうずくまり、或は板切れ、道具箱、枕木、トラツク等の障碍物を並べて出庫電車の進路を塞いで出庫を阻止したものであるとの点、及び同被告人は当該労働組合の組合員でない点等を綜合して、以上は争議行為とは認められず、また仮りに争議行為であるとしても、前示具体的行為の手段方法において、右は労働組合法一条二項所定の正当行為とは認められないとした趣旨と解すべきであるから、この原審の判断は当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三一九号、同二四年五月一八日大法廷判決集三巻六号七七二頁)の趣旨にも合致し、正当であるというべきである。
労働組合法第一条第二項の正当行為と認められない事例
労働組合法1条2項
判旨
労働組合の決定に基づかず少数者の専断により行われた行為や、軌道上に障害物を置くといった実力行使を伴う行為は、労働組合法上の正当な争議行為とは認められず、違法性が阻却されない。
問題の所在(論点)
労働組合の決議に基づかない少数者による実力行使を伴う争議行為が、労働組合法1条2項により正当な行為として刑法上の違法性を阻却されるか。
規範
争議行為としての正当性を有し、違法性が阻却されるためには、①当該労働組合の決定に基づき、組織的に行われること(主体の正当性)、および②具体的実行行為の手段・方法が社会通念上相当な範囲内にあること(手段の正当性)を要する。労働組合法1条2項の正当な行為といえるためには、これらを総合的に判断すべきである。
重要事実
被告人Jは、労働組合の組合員ではなかったが、外数名と共謀のうえ、労働組合の正式な決議に基づかないまま、少数者の専断により「争議行為」と称する行動を敢行した。具体的には、電車の前方通路である軌道上にうずくまったり、板切れ、道具箱、枕木、トラック等の障害物を並べて出庫電車の進路を塞ぎ、電車の出庫を阻止した。これに対し、業務妨害罪(暴力行為等処罰法違反等)の成否が争われた。
事件番号: 昭和31(あ)1649 / 裁判年月日: 昭和34年4月28日 / 結論: 棄却
スト支援者が会社の構内において争議中の労組員ら六、七〇名と共謀し、たまたま五・三〇記念大会視察中の巡査部長を取り囲み、多衆の威力を背景にして身体または自由に対し危害を加えかねまじき気勢を示して脅迫を続け、取り上げた警察手帳を読み上げたりした上強要して詫状を書かせ、これを参集者に向つて読み上げさせた後、強いてデモ隊の中央…
あてはめ
まず、本件行為は当該労働組合の決定に基づかず、少数者の専断により行われたものであり、主体の正当性を欠く。また、被告人J自身も組合員ではなかった。さらに、具体的手段において、軌道上に障害物を設置して電車の進路を物理的に遮断する行為は、労働組合法1条2項が想定する正当な手段の範囲を逸脱した実力行使である。したがって、これらを総合すれば、本件行為は正当な争議行為とは認められない。
結論
被告人の行為は労働組合法上の正当な行為とは認められず、業務妨害等の罪名について違法性は阻却されない。
実務上の射程
労働刑法における争議行為の正当性の限界を示した事例。特に「組合の決定なき少数者の専断」および「物理的障害物による進路封鎖」という2点において、正当性を否定する際の典型的なあてはめとして活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1724 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項ただし書きは、暴力の行使がいかなる場合であっても労働組合の正当な行為と解されないことを明示したものである。したがって、労働争議に伴う行為であっても、社会通念上許容される限度を超えた暴力の行使は刑法35条の正当業務行為に該当しない。 第1 事案の概要:被告人は、労働争議の過程におい…