判旨
起訴状において罪名の表示を欠いていたとしても、公訴事実が特定されている以上、当然に起訴が無効となるわけではない。また、起訴された犯罪と牽連犯の関係にある犯罪については、明示的な起訴がなくとも当然に裁判所の審判範囲に含まれる。
問題の所在(論点)
1. 起訴状に罪名の表示がない場合、起訴は無効となるか。2. 牽連犯の関係にある犯罪の一方について明示的な罪名の起訴がない場合、裁判所はこれを審判の範囲に含めることができるか。
規範
1. 起訴状において罪名の表示が欠落していても、公訴事実が具体的に記載されている限り、起訴としての効力を有する。2. 公訴不可分の原則に基づき、起訴された犯罪事実と手段・結果の関係にある牽連犯(刑法54条1項後段)を構成する事実については、その一部について明示的な起訴を欠く場合であっても、当然に裁判所の審判対象(審判の範囲)に含まれる。
重要事実
被告人Aらは、住居侵入および強盗の犯行を行ったとして有罪判決を受けた。しかし、検察官が提出した追公判請求書(起訴状に相当)には、公訴事実として住居侵入および強盗に該当する具体的事実の記載はあったものの、罪名として「住居侵入」の表示がなされていなかった。弁護人は、住居侵入について起訴がないにもかかわらず判決を下したことは、審判の請求を受けない事件について判決をした違法(旧刑訴法410条18号、現刑訴法378条3号参照)があると主張して上告した。
あてはめ
1. 本件の追公判請求書には、判示住居侵入および強盗の事実と同趣旨の記載があり、公訴事実は特定されていた。したがって、単に罪名の表示を欠いたからといって起訴が無効になることはない。2. 原判決は、住居侵入と強盗との間に手段・結果の関係を認め、牽連一罪として処断している。このように両罪が実質的に一罪の関係にある場合、仮に住居侵入についての明示的な罪名記載を欠いたとしても、既に適法に起訴された強盗の牽連犯として当然に審判の範囲に含まれると解される。
結論
住居侵入について別途の罪名表記がなくとも、強盗の牽連犯として審判の範囲に含まれるため、原判決に違法はなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和28(あ)3824 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪が強盗罪の手段となる関係にある場合、起訴状において訴因や罰条として明示され、被告人に送達されている限り、適法に訴訟の対象となり得る。 第1 事案の概要:被告人は、強盗等の罪で起訴された。被告人側は、住居侵入の事実が昭和28年1月24日付の起訴状には訴因罰条として含まれていたものの、同年3…
実務上の射程
訴因の特定(現刑訴法256条3項)や審判対象の確定に関する古典的判例である。特に「科刑上一罪の一部が起訴された場合、他部についても審判の範囲に含まれるか」という論点において、実体的真実主義の観点から肯定する立場を示す。もっとも、現行法下では被告人の防御権行使の観点から、訴因変更手続の要否(312条1項)という文脈で整理し直す必要がある点に留意すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)55 / 裁判年月日: 昭和23年4月6日 / 結論: 棄却
原判決が第一事實として判示した窃盗の事實については檢察官から適式の書面による公訴が提起されたことは記録上認められないことは所論のとおりであるが、原審は、右窃盗の事實は原判示第二事實の強盗未遂の事實と連續犯の關係あるものとして、言いかえれば適式に公訴の提起された強盗未遂罪と一罪の關係あるものとして審判したのであるから、原…
事件番号: 昭和24(れ)2907 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 棄却
住居侵入罪と強盜致死罪竝に強盜傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行爲は強盜致死及び強盜傷人罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であるから、前者が後者に處罰上吸收せられると做す所論は理由がない。しかも右の兩者の間には通常手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盜致死…