判旨
押収物の仮還付は受訴裁判所の裁量に属する事柄であり、本案事件に憲法違反の主張があるからといって、仮還付請求を棄却した決定が直ちに違憲となるわけではない。
問題の所在(論点)
押収物の仮還付請求に対する判断が受訴裁判所の裁量に属するか、および本案事件の違憲主張が仮還付拒否決定に対する特別抗告の適法な理由となり得るか。
規範
刑事訴訟法123条1項に基づく押収物の仮還付の可否については、受訴裁判所の広範な裁量に委ねられている。したがって、本案事件における憲法違反の主張等があったとしても、それは当然に仮還付の判断を左右するものではなく、裁量権の行使を争うことは特別抗告の理由(刑訴法405条、433条1項)にならない。
重要事実
被告人(申立人)は、押収物仮還付請求に対する異議申立を棄却した大阪高等裁判所の決定に対し、特別抗告を申し立てた。申立人は、本案の事件自体が憲法に違反していることを理由として、仮還付を認めない決定もまた違憲であると主張した。
あてはめ
申立人は本案事件の憲法違反を主張するが、仮還付の要否は証拠価値の保持や捜査・公判上の必要性等を総合して判断される裁判所の裁量事項である。本件において、原決定が仮還付を認めなかったことは、かかる裁量権の範囲内の判断といえる。したがって、単に本案事件に違憲の疑いがあることを主張しても、仮還付棄却決定そのものが違憲であるとの評価を導くものではなく、実質的に裁量判断の不当を争うものにすぎない。
結論
本件特別抗告は、受訴裁判所の裁量に属する事柄を争うものに過ぎず、適法な抗告理由がないため棄却される。
実務上の射程
裁判所による押収物仮還付の判断が裁量行為であることを端的に示した判例である。司法試験等の答案上は、仮還付の不服申立てにおいて、裁量権の逸脱・濫用がない限りは適法とされるという判断枠組みを支える根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(し)11 / 裁判年月日: 昭和28年9月16日 / 結論: 棄却
検察官のした押収物還付処分は還付すべき相手方を誤認したとしてその変更を求める請求を、単に理由なきものと認めて棄却したに過ぎない下級裁判所の決定に対しては、たとえ該決定の違憲を云為しても特別抗告適法の理由とはならない。
事件番号: 昭和28(し)10 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利の侵害を主張しても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、刑訴法405条の特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法32条(裁判を受ける権利)の違反を理由として特別抗告を申し立てた事案。しかし、その主張の具体的な内容は、原審の…
事件番号: 昭和28(し)85 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抗告裁判所が下した決定に対しては、刑訴法433条に基づく特別抗告をなしうるに留まり、当該高等裁判所に対して重ねて異議の申立てをすることはできない。 第1 事案の概要:抗告人が申し立てた起訴請求事件について、東京高等裁判所は昭和28年4月21日に抗告棄却の決定を下した。抗告人はこの決定を不服とし、原…
事件番号: 昭和44(し)70 / 裁判年月日: 昭和44年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の特別抗告(刑訴法433条)において、違憲主張が実質的な法令違反にすぎない場合や、判例違反の具体的摘示がない場合は、正当な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。抗告の趣旨において憲法違反を主張したが、その内容は実質的に単なる法令違反…
事件番号: 昭和32(し)51 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対しては、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てをすることはできない。したがって、かかる決定に対してなされた異議申立てを不適法として棄却した原決定に憲法違反の違法はない。 第1 事案の概要:申立人は、大阪地方裁判所による保釈保証金没取決定に対し、大阪高等裁…