検察官のした押収物還付処分は還付すべき相手方を誤認したとしてその変更を求める請求を、単に理由なきものと認めて棄却したに過ぎない下級裁判所の決定に対しては、たとえ該決定の違憲を云為しても特別抗告適法の理由とはならない。
検察官のした押収物還付処分に対する変更請求事件の決定に対する特別抗告の適法の理由なき事例
刑訴法430条1項,刑訴法432条,刑訴法426条,刑訴法427条,刑訴法433条
判旨
最高裁判所が抗告につき裁判権を有するのは、訴訟法に特別の定めがある場合に限られ、刑訴法433条の特別抗告は同法405条所定の事由がある場合にのみ認められる。原決定が憲法判断を示さず、単に検察官の処分の妥当性を是認したに過ぎない場合、還付相手方の誤認等の法令違反を主張することは適法な抗告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
刑訴法上不服を申し立てることができない決定に対し、単なる法令違反(還付相手方の誤認等)を憲法違反と主張して申し立てる特別抗告(刑訴法433条1項)は、同法405条の事由を具備するものとして適法か。
規範
最高裁判所に対する特別抗告(刑訴法433条1項)が適法と認められるためには、同法405条に規定する事由、すなわち憲法違反又は判例相反があることを理由とする場合に限られる。単なる法令違反や事実誤認の主張は、同条の適法な抗告理由には該当しない。
重要事実
検察官が行った押収物還付処分に対し、その変更を求める請求がなされた。原裁判所は、当該請求を理由がないものとして棄却し、検察官の処分を是認する決定を下した。これに対し、抗告人は、還付すべき相手方を誤認したものであり刑訴法の適用を誤ったものであるとして、憲法違反を名目に最高裁判所に特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和25(し)49 / 裁判年月日: 昭和28年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法433条に基づく特別抗告は、同法405条所定の事由がある場合に限られ、判決の押収物還付部分に対する被告人以外の第三者からの不服申立ては、適法な抗告理由に該当しない。 第1 事案の概要:被告人の業務上横領被告事件において、地裁支部が押収された金員を被害者に還付する旨の判決を下した。これに対…
あてはめ
原決定は、検察官の押収物還付処分の変更請求を棄却したに過ぎず、憲法上の判断を一切示していない。抗告人が主張する違憲の論旨は、その実質において、原決定が是認した検察官の処分が還付相手方の誤認により刑訴法の適用を誤ったという「単なる法令違反」の主張に帰着する。したがって、形式的に憲法違反を主張していても、実質的に405条所定の憲法判断等を含まない事案においては、適法な抗告理由があるとはいえない。
結論
本件特別抗告は、刑訴法405条の適法な抗告理由に該当しないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
特別抗告の門前払いの論理として重要である。実務上、決定等に対する不服申立てにおいて、単なる法令違反を強引に憲法違反(例えば適正手続き違反等)として構成しても、原決定に憲法判断が含まれない限り、433条の事由を欠くとして却下・棄却されるリスクを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和44(し)70 / 裁判年月日: 昭和44年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の特別抗告(刑訴法433条)において、違憲主張が実質的な法令違反にすぎない場合や、判例違反の具体的摘示がない場合は、正当な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。抗告の趣旨において憲法違反を主張したが、その内容は実質的に単なる法令違反…
事件番号: 昭和28(し)87 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】押収物の仮還付は受訴裁判所の裁量に属する事柄であり、本案事件に憲法違反の主張があるからといって、仮還付請求を棄却した決定が直ちに違憲となるわけではない。 第1 事案の概要:被告人(申立人)は、押収物仮還付請求に対する異議申立を棄却した大阪高等裁判所の決定に対し、特別抗告を申し立てた。申立人は、本案…
事件番号: 昭和28(し)85 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抗告裁判所が下した決定に対しては、刑訴法433条に基づく特別抗告をなしうるに留まり、当該高等裁判所に対して重ねて異議の申立てをすることはできない。 第1 事案の概要:抗告人が申し立てた起訴請求事件について、東京高等裁判所は昭和28年4月21日に抗告棄却の決定を下した。抗告人はこの決定を不服とし、原…
事件番号: 昭和28(し)10 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利の侵害を主張しても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、刑訴法405条の特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法32条(裁判を受ける権利)の違反を理由として特別抗告を申し立てた事案。しかし、その主張の具体的な内容は、原審の…