判旨
窃盗罪が成立するためには、権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞い、その経済的用法に従い利用・処分する意思(不法領得の意思)が必要である。商慣習に基づく正当な行為と認められない限り、当該意思の存在を肯定し得る。
問題の所在(論点)
被告人の行為に窃盗罪における「不法領得の意思」が認められるか。また、商慣習に基づく行為として違法性が阻却される、あるいは不法領得の意思が否定される余地があるか。
規範
窃盗罪(刑法235条)の成立に必要な主観的要件としての「不法領得の意思」とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用・処分する意思をいう。客観的に窃盗の事実が認められ、かつ、その行為が法令や正当な業務、あるいは確立された商慣習等に基づき適法化されない限り、同意思は否定されない。
重要事実
被告人が他人の財物を取得した行為について、被告人側は、当該行為が商慣習に基づく適法なものであり、不法領得の意思もなかったと主張して上告した。しかし、原判決および本件記録によれば、当該行為が適法であると認めるに足りる事実は存在しなかった。
あてはめ
本件記録に照らせば、被告人の行為が商慣習に基づき適法なものとして許容される事実は認められない。むしろ、記録上は窃盗の事実を肯認し得る状況にあり、権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞う意思(不法領得の意思)があったと評価するのが相当である。したがって、被告人の主張は前提を欠くものと言わざるを得ない。
結論
被告人の行為には不法領得の意思が認められ、窃盗罪が成立する。商慣習に基づく適法な行為とはいえず、有罪とした原判決に憲法違反や事実誤認の過誤はない。
実務上の射程
不法領得の意思の要否および内容を確認する際、特に「商慣習」等の正当化事由を主張する事案での反論枠組みとして活用できる。本判決は簡潔ながら、主観的要件の判断において客観的事実および適法性の有無が密接に関連することを示唆している。
事件番号: 昭和28(あ)3784 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
一 およそ窃盗罪の成立には不正領得の意思あることを必要とし、そして不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのである。 二 およそ判決がその事実認定の部において被告人は他人の所持保管にかかる他人所有の動産数点を窃取したものであるとの趣旨を判示し…