判旨
不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞い、その経済的用法に従い利用・処分する意思をいう。判例は、この意思の有無を基準に、窃盗罪と一時的な使用窃盗を区別している。
問題の所在(論点)
窃盗罪の成立に「不法領得の意思」が必要か、およびその具体的な定義が問題となる(刑法235条)。
規範
窃盗罪(刑法235条)の成立には、主観的構成要件として「不法領得の意思」が必要である。具体的には、①権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、かつ、②これを利用し、又は処分する意思を指す。このうち①の「排除意思」により、不可罰な一時的使用(使用窃盗)と区別される。
重要事実
本判決の原文からは、具体的な事案の詳細は不明である。しかし、本件は刑法における「不法領得の意思」が争点となった事案であり、過去の判例(昭和24年(れ)170号等)を引用する形で、不法領得の意思の定義が確認された事案である。
あてはめ
判決文からは具体的なあてはめの事実は不明であるが、最高裁は、被告人の行為について、権利者を排除して自己の所有物として振る舞う意思(排除意思)および経済的用法に従い利用処分する意思(利用処分意思)の存在を前提とした原判決の判断を、適法なものとして維持している。引用された昭和24年の判例等に基づけば、本件被告人の行為にはこれらの主観的意図が認められると評価されたものと解される。
結論
窃盗罪が成立するためには不法領得の意思が必要であり、これがない単なる使用窃盗は処罰されない。本件では不法領得の意思が認められるため、窃盗罪の成立を肯定した。
実務上の射程
司法試験答案においては、窃盗罪の主観的要件として「不法領得の意思」を定立する際の根拠として用いる。特に、ガソリンの窃取や自動車の乗り回しなど、使用窃盗との区別が問題となる場面で、①権利者排除意思、②利用処分意思の両要素を明示するために必須の規範である。
事件番号: 昭和26(あ)1620 / 裁判年月日: 昭和28年2月13日 / 結論: 棄却
被告人は本件衣類の保管者であるAが金をくれなければ絶対に被害品たる衣類を返さず、半年一年と金をくれるのが長びけば処分する意思であつたというのであるから、いわゆる不法領得の意思がなかつたということはできない。