一 原判決の維持する第一審判決が、弁護人の主張に対する判断において認定判示した事実関係の下においては、被告人は、権利者を排除して本件物品に対する完全なる支配を取得し所有者と同様の実を挙げる意思即ち不正領得の意思を有していたこと明らかである。原判決は、右と、やや、理由を異にするが、その結論においては正当である。 二 註。第一審判決の認定した事実の要旨 三 被告人は被害者物干場より衣類女物腰巻等を盗取し、これを自宅に持ち帰りこれ等異性に属する物件を一時的にせよ身に纒い又はこれを翫ひ性的感情を衝動せしめ倒錯的性行為をすることに利用し、且つこれ等物件を被害者に全く返還の意思なく日常他人の出入稀疏なる自宅二階西隅の古箪笥及木箱等に隠匿し自己の所有物として所持していた。
不法領得の意思が認められた事例。
刑法235条
判旨
不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用・処分する意思をいう。本件では、権利者を排除して物品に対する完全な支配を取得し、所有者と同様の実を挙げる意思が認められるため、不法領得の意思が認められる。
問題の所在(論点)
窃盗罪(刑法235条)の成立に必要な主観的要件としての「不法領得の意思」の内容、および本件の事実関係下でそれが認められるか。
規範
不法領得の意思とは、権利者を排除して目的物に対する完全なる支配を取得する意思(権利者排除意思)、および所有者と同様にその経済的用法に従い利用・処分する意思(利用処分意思)をいう。
重要事実
被告人は、他人の所有する物品(本件物品)について、権利者の意思に反してこれを取り出した。具体的な態様や目的の詳細は判決文からは不明であるが、第一審および原審において、被告人が当該物品を自己の支配下に置いた事実関係が認定されている。
あてはめ
認定された事実関係によれば、被告人は「権利者を排除して本件物品に対する完全なる支配を取得」しており、権利者排除意思が認められる。また、「所有者と同様の実を挙げる意思」を有していたと判断されることから、単なる一時使用や毀棄の意思にとどまらず、利用処分意思も具備しているといえる。したがって、これら併せて不法領得の意思が認められる。
結論
被告人には不法領得の意思が認められ、窃盗罪が成立する。
実務上の射程
本判決は不法領得の意思の定義を「権利者排除意思」と「利用処分意思」の二要素からなるものとして確立した。答案作成上は、不可罰な一時使用(排除意思の欠如)や毀棄罪(利用処分意思の欠如)との区別において、これら二要素を個別に検討するための規範として用いる。
事件番号: 昭和28(あ)3632 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞い、その経済的用法に従い利用・処分する意思をいう。判例は、この意思の有無を基準に、窃盗罪と一時的な使用窃盗を区別している。 第1 事案の概要:本判決の原文からは、具体的な事案の詳細は不明である。しかし、本件は刑法における「不法領…