河川の流れに入り、大水で漂流中の木材一本(トガの木、直径三尺、長さ二間)を拾得して河岸に引揚げた上、その流失を防ぐため、附近の柱に巻きつけてあつた他人所有の電線三本長さ二一メートル(同所からの揚水用モーターに送電するためのもので、当時は大水に備え一時支柱から外し、本柱にまきつけてあつた。)中の約一二メートル(時価約金一、二〇〇円相当)を勝手に切断し、これを用いて前記木材を繋留した場合には、右電線を不法に領得する意思がなかつたものとはいえず、同電線窃盗の罪が成立するものと解するのが相当である。
窃盗罪の成立する事例
刑法235条
判旨
不法領得の意思の定義について、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用または処分する意思を指すと解し、本件における窃盗罪の成立を認めた。
問題の所在(論点)
窃盗罪における不法領得の意思の有無、および原判決による窃盗罪の成立認定の当否が問題となった。
規範
窃盗罪(刑法235条)の成立には、主観的構成要件として「不法領得の意思」が必要である。これは、①権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞う意思(権利者排除意思)と、②その物の経済的用法に従い利用または処分する意思(利用処分意思)を指す。
重要事実
本件において被告人は、他人の財物を窃取したとして起訴された。弁護人は、事実誤認および法令違反を理由に上告したが、原判決が認定した事実関係において、被告人が他人の物を領得した事実に争いがあった。判決文からは具体的な物品や動機、実行行為の詳細な事実は不明であるが、原判決はこれらの事実に基づき窃盗罪の成立を肯定していた。
あてはめ
最高裁判所は、原判決が判示した事実関係の下において、被告人に不法領得の意思が認められると判断した。具体的には、原判決の認定によれば、被告人は権利者を排除して他人の物を自己の所有物として扱う意思(権利者排除意思)を有しており、かつ、当該物件をその本来の用途に従って利用または処分する意思(利用処分意思)も認められる。したがって、不法領得の意思が具備されており、窃盗罪の構成要件を充足すると判断される。
結論
本件における窃盗罪の成立を認めた原判決の判断は相当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
不法領得の意思の定義を、使用窃盗や毀棄・隠匿意思と区別するためのメルクマールとして活用する。答案上は、一時使用の成否を検討する場面では権利者排除意思の有無を、隠匿目的などの場面では利用処分意思の有無を、それぞれ具体的事実に基づき論じる際の基準とする。
事件番号: 昭和28(あ)3784 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
一 およそ窃盗罪の成立には不正領得の意思あることを必要とし、そして不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのである。 二 およそ判決がその事実認定の部において被告人は他人の所持保管にかかる他人所有の動産数点を窃取したものであるとの趣旨を判示し…