原審の認定した事実によれば被告人は判示横領にかかる米を利用し欺罔手段を弄して他から金員を騙取し以て新法益を侵害したというのであるから詐欺罪の成立すること勿論であり、原判決は昭和二二年(れ)一〇五号同二三年四月七日言渡の当裁判所大法廷判決(判例集二巻四号二九八頁以下参照)と同旨に出でたものである。
横領した米を利用し他から金員を騙取する行為と詐欺罪の成立
刑法246条
判旨
横領罪の成立後であっても、当該横領にかかる物を利得するに際し、欺罔手段を弄して他から金員を騙取した場合には、新たな法益を侵害したものとして、詐欺罪が別途成立する。
問題の所在(論点)
横領した物を処分・利用する過程で他人を欺いて金員を交付させた場合、当該行為は横領罪に吸収される不可罰的事後行為となるか、それとも別途詐欺罪を構成するか。
規範
先行する横領行為によって物の不法領得が既遂に達した後であっても、その後に当該物を利用してなされた行為が、先行行為により侵害された法益とは別個の新法益を侵害すると認められる場合には、不可罰的事後行為とならず、別途犯罪(詐欺罪等)が成立する。
重要事実
被告人は、業務上占有していた米を横領し、さらにその米を利用して第三者を欺く手段を講じることで、当該第三者から金員を騙取した。弁護人は、横領罪の成立後に生じた行為であるとして詐欺罪の成立を争った。
あてはめ
被告人が判示横領にかかる米を単に処分するにとどまらず、これを利用して「欺罔手段を弄して他から金員を騙取」した事実に着目すれば、それは横領によって侵害された所有者の法益とは別に、金員の交付者の財産権という「新法益を侵害した」ものと評価できる。したがって、先の横領行為に包含される行為とはいえない。
結論
被告人には詐欺罪が成立する。
実務上の射程
共罰的事後行為(不可罰的事後行為)の限界を示す判例である。状態犯において、既遂後の行為が新たな被害者や新たな法益を侵害する態様でなされた場合には、併合罪として処理すべきであることを示唆しており、答案上は詐欺罪の成否を論じる際の法益侵害性の検討に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)722 / 裁判年月日: 昭和29年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪と横領罪が成立する場合、それらが単一の行為によるものでない限り、併合罪として処断されるのが相当である。 第1 事案の概要:被告人は詐欺罪および横領罪に問われた。上告人は、横領行為が一つであるか複数であるかによって罪数判断に影響があると主張したが、原審は詐欺罪の刑に併合罪の加重をして処断した。…