判旨
被告人らの行為について刑法197条の3の収賄罪による不正行為(加重収賄罪)の成立を否定し、詐欺罪の成立を認めた一審判決及び原判決を、事実認容の過程に誤りがないとして維持した。
問題の所在(論点)
被告人のなした収賄に伴う不正行為とされる事実に対し、詐欺罪を適用して処断することが可能か。また、一審・二審による詐欺罪の事実認定及び法適用の妥当性が問われた。
規範
公務員が職務に関して賄賂を収受等し、よって「不正な行為」をした場合に加重収賄罪(刑法197条の3)が成立し得るが、当該行為が「欺罔行為」にあたり、財物の交付を受ける目的で行われた場合には、収賄罪の枠組みではなく詐欺罪(246条)として処断されることがあり得る。
重要事実
被告人A、B、Cらは、その犯罪行為について一審において詐欺罪の成立が認められた。弁護人側は、被告人らの行為は収賄に伴う不正行為にあたるものであり、詐欺罪として処断した原判決の擬律(法の適用)は従来の大審院判例と相反し判例違反であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、第一審判決が被告人らの行為をすべて詐欺罪として認定しており、所論が主張するような「刑法197条の3に該当する収賄に伴う不正行為」として事実を認定・処断しているわけではないことを指摘した。その上で、弁護人の主張は原判決の認定に添わない独自の事実を主張するもの、あるいは事実誤認を主張するものにすぎず、適法な上告理由にならないと判断した。また、証拠関係に照らしても第一審の事実認定は十分であり、証拠上の理由不備も存在しないとした。
結論
被告人らの犯罪行為について詐欺罪の成立を認めた原判断に誤りはなく、判例違反等の上告理由は認められないため、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(あ)1640 / 裁判年月日: 昭和27年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽の書面を作成・行使して他人を欺罔し財物を交付させた場合、たとえ私文書偽造・同行使罪の成立が否定されたとしても、詐欺罪(刑法246条)が成立することに妨げはない。 第1 事案の概要:被告人は、虚偽の内容を含む書面を作成し、これを用いて相手方を欺き、金員等の交付を受けたとされる事案。第一審判決は私…
本判決は、公務員の職務執行に絡む不正であっても、具体的な行為態様が詐欺の構成要件を満たす場合には詐欺罪が成立し得ることを前提としている。答案上は、職務に関連した金銭授受等の事案において、収賄罪のみならず詐欺罪の成否が問題となる場面での事実認定の重要性を示す例として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)846 / 裁判年月日: 昭和28年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法56条及び57条に規定される累犯加重の制度は、憲法39条が禁止する二重処罰の禁止に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑法上の累犯にあたるとして、同法56条、57条に基づき刑を加重された事案。弁護人は、累犯加重は前罪について再び処罰するものであり、憲法39条の二重処罰禁止、および憲法37条…
事件番号: 昭和27(あ)4600 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する犯罪の収益分配ではなく、その発覚を防止する目的でなされた別個の行為については、社会通念上も経験則上も別個の犯罪事実として認定することが可能である。 第1 事案の概要:被告人Cは、第一審判決において判示された第十の事実と、第二十一の内D関係の事実が、実態としては単一の社会的事実であると主張し…