判旨
先行する犯罪の収益分配ではなく、その発覚を防止する目的でなされた別個の行為については、社会通念上も経験則上も別個の犯罪事実として認定することが可能である。
問題の所在(論点)
一連の犯罪行為に関連する複数の事実が、刑法上の一個の事実(罪数論上の単一性)として評価されるべきか、それとも併合罪等の別個の事実として認定されるべきか。特に、犯罪収益の分配と発覚防止行為の区別が問題となる。
規範
二つの事実が基本的・社会的事実として単一であるか、あるいは別個の事実であるかの判断は、それらが先行する犯罪の収益分配にすぎないのか、あるいは犯罪の発覚防止といった別個の目的を持って行われた独立した行為であるのかという点に基づき、社会通念及び経験則に照らして判断される。
重要事実
被告人Cは、第一審判決において判示された第十の事実と、第二十一の内D関係の事実が、実態としては単一の社会的事実であると主張した。具体的には、後者の行為が前者の犯罪による取得金額を分配したものであるか、あるいは別個の事実であるかが争点となった。
あてはめ
本件において、後者の事実は前者の犯罪による取得金額を単に分配したものではなく、前者の犯罪の発覚を防止するために行われた別個の行為であると認定できる。このような認定は、証拠の趣旨に反せず、経験則上も肯認できるものであるため、社会通念上単一の事実とはいえない。
結論
本件各事実は社会通念上一個の事実とは認められず、別個の事実として認定した第一、二審判決の判断は正当であり、違憲又は事実誤認の違法はない。
実務上の射程
罪数論における「一個の行為」の範囲を確定する際の判断材料となる。事後行為が共犯者間での単なる利益享受(収益分配)にとどまらず、証拠隠滅や発覚防止といった新たな法的侵害や目的を伴う場合には、別罪を構成し得ることを示唆している。
事件番号: 昭和27(れ)201 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和26(れ)1557 / 裁判年月日: 昭和27年1月8日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和27(あ)2704 / 裁判年月日: 昭和29年3月31日 / 結論: 棄却
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