判旨
憲法38条2項が禁じる「不当に長く拘禁された後の自白」とは、不当な拘禁と自白との間に因果関係がある場合を指し、因果関係がないことが明らかな場合には証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
憲法38条2項の「不当に長く拘禁された後の自白」の意義、および前件の長期拘禁と後件の自白との間に因果関係が認められない場合にも同条項が適用されるか。
規範
憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」として証拠能力が否定されるためには、不当に長い拘禁と自白との間に因果関係が存在することを要する。したがって、拘禁が不当に長期にわたるものであったとしても、自白がそれとは無関係になされたことが明らかな場合には、同条項には当たらない。
重要事実
被告人は第一の事実により約8ヶ月半勾留された後、保釈中に第二の事実を犯した容疑で再び勾留された。被告人は、第一の事実については終始否認していたが、第二の事実については勾留後約2ヶ月半経過した公判期日に自白した。弁護人は、第一の事実による拘禁が否認ゆえに長期化したと考えた被告人が、再度の保釈を得るために第二の事実を自白したものであり、不当に長い拘禁後の自白に当たると主張した。
あてはめ
本件では、第一の事実による勾留と第二の事実による勾留との間には2ヶ月半の空白期間がある。また、被告人は第一の事実については一貫して否認しており、自白によって保釈を得たという経緯も存在しない。これらの事件の内容および経過に照らせば、第二の事実に関する自白が、仮に不当に長期であったと仮定される第一の勾留の結果としてなされたもの(因果関係があるもの)とは到底認められない。
結論
本件自白は憲法38条2項にいう不当に長い拘禁後の自白には当たらず、証拠能力を認めた原判決に憲法違反はない。
実務上の射程
自白の証拠能力に関する憲法上の論点であり、答案では「不当な拘禁」の有無だけでなく「因果関係」の要否に言及する際に用いる。実務上、先行する拘禁の不当性が後行の自白に心理的影響を及ぼしたかが争点となるが、本判例は客観的な時間的間隔や否認の継続事実から因果関係を否定する判断手法を示している。
事件番号: 昭和26(あ)3343 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長い抑留又は勾禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、事実の内容や手続の経過等を総合的に勘案して判断されるべきである。また、自白以外の証拠により犯罪事実を認定し得る場合には、自白のみによる有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が司法警察官に対して行った…