判旨
別罪での勾留中に別の余罪について自白した場合であっても、その後の公判廷での自白が不当に長い拘禁によるものとは認められない限り、証拠能力を否定すべき理由にはならない。
問題の所在(論点)
別罪(詐欺)での勾留中に別の犯罪事実(恐喝)を自白し、その後の公判廷でなされた自白が、憲法38条2項及び刑訴法319条1項にいう「不当に長い拘禁」後の自白として証拠能力を否定されるべきか。
規範
憲法38条2項及び刑訴法319条1項の「不当に長い拘禁」に該当するか否かは、自白に至る経緯、拘禁の目的、期間等を総合して判断される。特に、別件での勾留中に余罪を自白し、その後の公判廷で自白を維持した場合、当初の自白から公判廷での自白に至るまでの過程において、拘束の不当性が自白の任意性を喪失させる程度に達しているかが基準となる。
重要事実
被告人は昭和26年11月22日、詐欺の事実によって勾留された。その勾留中の同年12月6日、司法警察員の取調べに対し、本件である恐喝事実について自白した。さらに同月24日の副検事による取調べでも自白を維持し、その後、昭和27年1月21日の第一審第一回公判廷において改めて自白に至った。
あてはめ
被告人は、詐欺事件での勾留開始から約2週間後に恐喝の事実を司法警察員に自白している。その後、検察段階でも同様の自白を維持し、勾留開始から約2か月後の第一審初公判において再び自白した。このような経緯に照らせば、公判廷での自白は、時間の経過のみをもって不当な拘束下での心理的強制によるものとは評価できず、不当に長い拘禁に起因する自白とは認められない。
結論
本件公判廷での自白は不当に長い拘禁によるものとは認められない。したがって、その証拠能力を認め、有罪の証拠とした第一審判決は正当である。
実務上の射程
余罪取調べと自白の証拠能力に関する判断事例である。別件逮捕・勾留の違法性が直接議論されているわけではないが、拘禁期間中の余罪自白が直ちに「不当に長い拘禁」による自白として排除されるわけではないことを示している。答案上は、自白の任意性が争点となる場面で、拘禁の長さや自白の維持過程を評価する際の参考とする。
事件番号: 昭和56(あ)928 / 裁判年月日: 昭和56年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が任意性を欠くものではなく、かつ被告人に対する勾留が憲法38条2項にいう「不当に長い拘禁」にあたらない場合には、当該自白の証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:被告人が刑事被告事件において自白を行ったが、その自白の任意性および勾留期間の正当性が争点となった。弁護人は、被告人に対す…
事件番号: 昭和28(あ)502 / 裁判年月日: 昭和28年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項が禁じる「不当に長く拘禁された後の自白」とは、不当な拘禁と自白との間に因果関係がある場合を指し、因果関係がないことが明らかな場合には証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:被告人は第一の事実により約8ヶ月半勾留された後、保釈中に第二の事実を犯した容疑で再び勾留された。被告人は、第…