判旨
判決書の誤記が明らかである場合や、自白以外の証拠を総合して事実認定が行われている場合には、事実誤認や違憲の主張は上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
判決書における氏名の誤記が上告理由となるか、および自白以外の証拠を総合した事実認定が補強法則(憲法38条3項)に照らして適法か。
規範
判決書に明らかな誤記がある場合、それは直ちに判決の効力を左右する違法とはならない。また、補強証拠の存在については、被告人の自白のみならず、挙示された他の証拠を総合して判示事実が認定できるか否かにより判断される。
重要事実
被告人が上告を申し立てた事案において、原判決の説示中に氏名の誤記(「松岡松平」とあるべきを「A」としたもの等)が存在した。また、被告人は自白の証拠能力や証明力を争い、憲法違反および事実誤認を主張して上告した。
あてはめ
氏名の記載については、文脈上「A」とあるのが「松岡松平」の誤記であることは明白であり、判決の前提を欠くものとはいえない。事実認定については、原判決は自白だけでなく他の証拠を総合しており、それらの証拠を照らし合わせれば判示事実を肯定することが可能である。したがって、証拠の総合評価に基づく認定に合理性があり、違憲の主張は前提を欠く。
結論
本件各上告趣意は刑訴法405条の上告理由に当たらず、本件上告を棄却する。
実務上の射程
判決書の明白な誤記が直ちに破棄理由とならないこと、および補強法則の充足を証拠の総合評価によって判断する実務上の運用を再確認する際に参照される。司法試験においては、事実誤認の主張に対する判旨の形式的対応として把握すべき事案である。
事件番号: 昭和29(あ)341 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告趣旨であっても、その実質が事実誤認の主張に帰する場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を理由として上告を申し立てたが、その主張の内容を精査したところ、実質的には下級審の事実認定の不当を訴える事実誤認の主張にとどまるものであった事案。 第2…