判旨
複数の贈賄行為が同一の犯意に基づくものか否かは事実認定の問題であり、供与を受けた金員の一部を自己に保有しているような事情がある場合、各行為が独立した犯罪を構成すると認定することは適法である。
問題の所在(論点)
数回にわたる金員の供与が「同一の犯意」に基づくものとして包括して一罪と評価されるべきか、それとも各々が独立した犯罪を構成するのか。特に、供与された金員の一部を自己に保有している状況が、犯意の同一性の判断にどのように影響するか。
規範
一連の贈賄行為が、刑法上の包括一罪(または連続犯)となるか、あるいは別個の罪となるかは、犯行の態様、時間的・場所的近接性、および「同一の犯意」に基づいているかという事実認定によって決せられる。
重要事実
被告人は、贈賄として供与を受けた金員について、その一部をそのまま自己の懐に保有し続けた。弁護側は、一連の行為が同一の犯意に基づくものである旨を主張し、原判決の罪数評価に法令違反があると争った。
あてはめ
本件において被告人は、供与された金員の一部を自己に保有し続けていた。原判決はこの事実関係を前提に、各行為が「同一の犯意」に基づき一連の関連性を持つものとは認めず、別個の犯罪が成立すると認定した。最高裁は、このような事実認定を不合理とはいえず、違法ではないと判断した。
結論
本件各行為が同一の犯意に基づかないとした原判決の認定は適法であり、各行為について別個に罪が成立するとした判断は維持される。
実務上の射程
罪数論における「同一の犯意」の有無は、被告人の主観だけでなく客観的な利得状況等から総合的に判断されるべき事実認定の問題であることを示す。特に、受領した賄賂の使途(自己保有の有無)が、一連の犯意を否定する一つの事情となり得る点に実務上の留意点がある。
事件番号: 昭和29(あ)2658 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙運動の報酬として支払われた金員が、被告人自身の投票に対する対価の趣旨をも含むと認定されたとしても、直ちに憲法上の平等原則に反するものではない。原判決が「家長が家族の選挙権を左右できる」との趣旨で判示していない限り、事実認定の妥当性の問題にすぎない。 第1 事案の概要:被告人が、他者のために投票…