記録によると、所論指摘の証人の供述調書中に所論のような伝聞証言が認められるが、この伝聞証言を除いても判示事実を認めるに十分であるから当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第五六九四号第二九年二月一八日第一小法廷判決集八巻二号一四五頁)の趣旨に徴し、違法とはいえない。
証拠の標目中に掲げられた証言中の伝聞証言を除いても判示事実を認めることができる場合と違法の有無
刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項
判旨
受命裁判官が検証現場付近において証人尋問を行う場所の決定は裁量権の範囲内であり、当事者が異議を述べなかった場合は当該証人尋問調書の証拠採用は適法である。
問題の所在(論点)
受命裁判官が検証に際して現場付近で証人尋問を行うことの可否、およびその場所的決定に関する裁量の範囲が問題となる。
規範
受命裁判官が検証を実施する際、検証現場のいずれの地点において証人尋問を行うかを決定することはその権限に属する。特段の理由がある場合には、現場付近のいずれかの地点においてこれを行うことも自由な裁量に含まれる。また、当該地点で行われた証人尋問につき、当事者が異議を述べず、調書提出時にも異議がない場合には、当該調書を証拠とすることは違法ではない。
重要事実
第一審において、受命裁判官が検証を実施した際、検証現場付近の地点において証人尋問が行われた。弁護人は、この尋問場所の選定等が違法であると主張して上告したが、記録上、証人尋問の実施時およびその調書が公判に提出された際のいずれにおいても、当事者から異議が述べられた形跡は認められなかった。
あてはめ
本件において、受命裁判官は検証現場付近で証人尋問を施行しているが、尋問場所の選定は裁判官の裁量権の範囲内である。また、当事者は尋問の実施時にも、その結果を記録した調書の証拠提出時にも異議を述べていない。したがって、刑事訴訟法上の手続的瑕疵はなく、証拠能力を認めた原判断に違法はない。なお、調書中に伝聞証言が含まれていたとしても、それを除外して事実認定が可能であれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
結論
受命裁判官による証人尋問場所の決定は適法な裁量の範囲内であり、当事者の異議がない以上、当該調書の証拠採用に違法はない。
実務上の射程
検証に付随する証人尋問(現場指示等)の場所的適格性や、手続的瑕疵に対する当事者の異議の有無が証拠能力に及ぼす影響を検討する際の指標となる。特に、現場から多少離れた場所での尋問であっても、裁量の範囲内として容認され得る点に射程が及ぶ。
事件番号: 昭和33(あ)440 / 裁判年月日: 昭和36年2月24日 / 結論: 棄却
刑訴二二七条、二二八条の証人尋問に立会う検察官には同一五七条三項の準用により証人尋問権があると解される。