判旨
憲法38条2項及び刑訴法319条1項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」の意義に関し、勾留後14日、16日、19日目に作成された供述調書は、直ちに不当に長い拘禁後の自白に該当するものではない。
問題の所在(論点)
勾留後14日から19日という期間を経てなされた自白が、憲法38条2項および刑訴法319条1項の「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」として、証拠能力を否定されるべきか。
規範
憲法38条2項及び刑訴法319条1項の「不当に長い拘禁」とは、拘束期間の長短のみを形式的に判断するのではなく、具体的事案における捜査の必要性や手続の適正さを考慮し、自白を強制するような不当な圧迫が加えられたといえる状況にあるかを実質的に判断すべきである。
重要事実
被告人は勾留された後、勾留14日目、16日目、および19日目にそれぞれ供述調書が作成された。弁護人は、これらの調書に記載された自白は不当に長い勾留の後になされたものであるとして、その証拠能力を争った。
あてはめ
最高裁判所の先例(昭和23年10月6日大法廷判決等)の趣旨に照らせば、本件のように勾留から14日、16日、19日目に作成された各供述調書は、その期間の長さをもって直ちに「不当に長い拘禁」に当たるとはいえない。本件における具体的な拘留の経緯をみても、自白の任意性を否定すべき特段の事情は認められず、法が禁じる不当な拘束下での自白には該当しないと解される。
結論
本件各供述調書は「不当に長い拘禁後の自白」には該当せず、証拠能力が認められる。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
自白の証拠能力(任意性)の論点において、単に拘束期間が数週間に及ぶことのみをもって「不当に長い拘禁」と主張する議論を退ける際の根拠となる。実務上は、期間の長短だけでなく、その間の取り調べ状況や接見の有無などの具体的態様が重要となるが、本判決は期間に関する一つの目安(14〜19日程度では不当とはいえない)を示している。
事件番号: 昭和29(あ)1516 / 裁判年月日: 昭和29年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、拘禁の開始から自白に至るまでの日時の近接性等に照らして判断される。身柄拘束後、短期間でなされた自白については、不当に長い拘禁後の自白として証拠能力を否定することはできない。 第1 事案の概要:被告人が検察官に対して行っ…