判旨
不当に長い抑留・拘禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)の該当性は、事案の性質や具体的状況に照らして判断されるべきであり、12日から32日経過後の自白であっても、直ちに証拠能力が否定されるわけではない。
問題の所在(論点)
抑留・拘禁開始から12日から32日経過した後の自白が、憲法38条2項および刑訴法319条1項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」として、証拠能力を否定されるか。
規範
憲法38条2項及び刑訴法319条1項は、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白を証拠とすることができないと規定する。この「不当に長い」か否かは、事案の複雑性、証拠収集の難易、手続の適正性などの諸事情に照らし、当該抑留・拘禁が自白を強制するための不当な手段に至っているか否かによって決せられる。
重要事実
被告人が抑留または拘禁されてから12日から32日が経過した後に自白調書が作成された。弁護人は、この自白が不当に長い抑留・拘禁の後の自白に該当し、違憲であると主張した。なお、自白の任意性を疑うに足りる具体的な証跡は存在しなかった。
あてはめ
本件における自白は、抑留・拘禁後12日から32日目に作成されているものの、本件の事案の性質や記録上の諸事情に照らせば、当該期間の経過が直ちに不当な抑留・拘禁に該当するとはいえない。また、記録上、自白の任意性を疑うべき事情も見当たらない。したがって、期間の長さのみをもって不当な抑留・拘禁による自白と評価することはできない。
結論
本件自白は「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」に当たらないため、証拠能力が認められる。
実務上の射程
自白の証拠能力が争われる際、拘束期間の長さのみで形式的に判断するのではなく、実質的に任意性を害するような「不当」な状況があったかを検討する際の基準となる。答案では、単なる期間の長短だけでなく、取調べの態様や事件の規模等の個別事情とあわせて、任意性の有無を検討する流れで引用する。
事件番号: 昭和28(あ)3295 / 裁判年月日: 昭和28年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項及び刑訴法319条1項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」の意義に関し、勾留後14日、16日、19日目に作成された供述調書は、直ちに不当に長い拘禁後の自白に該当するものではない。 第1 事案の概要:被告人は勾留された後、勾留14日目、16日目、および19日目にそれぞれ供述調…