判旨
不当な抑留・拘禁中に作成された供述調書であっても、その一事のみをもって直ちにその証拠能力が否定されるものではなく、任意性が認められ、かつ被告人の同意がある場合には証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
不法な逮捕・拘禁中に作成された供述調書について、その先行する手続の違法のみをもって直ちに証拠能力が否定されるか、あるいは被告人の同意や任意性の存在によって証拠として許容されるか。
規範
不法な逮捕・拘禁中に得られた自白であっても、その事実のみをもって直ちに当該供述調書の証拠能力を無効とすべきではない。当該供述が憲法38条2項や刑訴法319条1項の「任意にされたものでない疑い」があるか、または適法な証拠調べの手続きを経て同意がなされているか等により判断される。
重要事実
被告人が検察官に対して供述した調書について、第一審の公判において被告人自身が証拠とすることに同意した。その後、弁護人は当該調書が不法な逮捕・拘禁中に作成されたものであるとして、憲法31条違反および証拠能力の欠如を主張して上告した。
あてはめ
本件では、被告人は第一審の第一回公判において、問題となっている検事に対する各供述調書を証拠とすることに同意している。また、当該供述の任意性については何ら抗弁がなされていない。仮に弁護人が主張するように、当該調書が不当な抑留・拘禁中に作成されたという事実があったとしても、それだけで直ちに証拠能力が否定されるわけではない。
結論
本件供述調書の証拠能力は肯定され、これに基づき有罪とした原判決に憲法31条違反等の違法はない。上告棄却。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則が確立される前の古い判例であり、現在は「重大な違法」があり「排除が相当」かという基準で判断されるが、本判決は「不法拘禁=直ちに自白排除」という硬直的な構成を否定した点に意義がある。答案上は、違法収集証拠排除法則の文脈で、先行手続の違法が自白の証拠能力に及ぼす影響を論じる際の否定的な一資料として位置付けられる。
事件番号: 昭和30(あ)1822 / 裁判年月日: 昭和30年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人や共犯者等の供述調書が強制に基づいて作成されたという事実が認められない場合には、自白の任意性を否定すべき憲法違反の主張は前提を欠き、証拠能力を認めることができる。 第1 事案の概要:被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書、共犯者等の検察官に対する各供述調書について、第一審判決が犯罪事…