拷問、強制、不当に長い抑留・拘禁等を理由とする違憲(憲法三八条、三六条等違反)主張が欠前提とされた事例
憲法36条,憲法38条
判旨
拷問、強制、脅迫、偽計等の疑いがない自白や、不当に長くない抑留・拘禁の下で得られた供述調書は、憲法38条等に違反せず証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
捜査官による不当な働きかけの疑いや不当に長い拘束期間がある場合に、供述調書の証拠能力(任意性)が否定されるか(憲法31条、38条1項、刑訴法319条1項)。
規範
自白等の供述証拠について、捜査官による拷問、強制、脅迫、偽計等の不当な手段によって得られたと疑うべき証跡がなく、かつ、その前提となる抑留・拘禁が不当に長いものでない場合には、憲法31条、38条1項等の適正手続および供述拒否権に抵触せず、証拠能力を肯定できる。
重要事実
被告人が、捜査段階で作成された各供述調書について、捜査官による拷問、強制、脅迫、偽計等によって得られたものであること、および抑留・拘禁が不当に長い期間に及んだものであることを理由に、憲法31条、37条、38条等に違反し証拠能力が否定されるべきであると主張して上告した事案。
あてはめ
記録に照らしても、所論のような拷問、強制、脅迫、偽計等によって供述が得られたと疑うべき証跡は存在しない。また、指摘された抑留・拘禁の期間についても、諸状況を考慮すれば不当に長いものとは認められない。したがって、これらの供述調書が憲法や刑訴法の定める証拠排除事由に該当する事情は認められないと判断される。
結論
本件各供述調書の証拠能力は肯定され、憲法違反および判例違反の主張には理由がないため、上告は棄却される。
実務上の射程
自白の任意性を争う際の基本的な判断枠組みを示す。拷問等の直接的強制だけでなく、抑留・拘禁の不当な長期化も考慮要素となるが、本判決は記録上の具体的証跡の有無を重視する実務的姿勢を示している。
事件番号: 昭和29(あ)76 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に十分な補強証拠が存在し、かつ検察官に対する供述が強要や誘導によるものと認められない場合には、憲法38条3項等の違憲の主張は前提を欠き、有罪判決は維持される。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事実について、第一審判決は被告人の自白のほかに補強証拠を掲げて事実を認定し、原判決もこ…