本件犯罪(昭和二七年五月四日)に適用のある昭和二七年法律八一号により法律として効力を有する昭和二二年勅令九号第二条は、婦女に売淫をさせることを内容とする契約をした者を処罰する規定であり、職業安定法六三条二号は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介等を行つた者又はこれらに従事した者を罰する規定であつて、その取締の目的及び違反行為の内容性質等を異にするから、両規定は、何等特別法又は例外法の関係がなく、後者によつて前者が適用されなくなるものではない。
昭和二二年勅令第九号(婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する件)第二条と職業安定法第六三条二号との関係
昭和22年勅令9号(婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する件)2条,昭和27年法律81号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律),昭和27年法律137号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律)1条2号,職業安定法63条2号
判旨
昭和22年勅令9号2条と職業安定法63条2号は、取締目的や行為の内容・性質を異にするため、特別法・例外法等の関係にはなく、併立し得る。
問題の所在(論点)
婦女に売淫をさせる契約を処罰する規定(昭和22年勅令9号2条)と、有害業務への職業紹介等を処罰する規定(職業安定法63条2号)が、特別法・一般法の関係にあり一方が他方を排除するか(罪数の処理および法条競合の成否)。
規範
二つの処罰規定が、その取締の目的及び違反行為の内容、性質等を異にする場合には、両規定は特別法又は例外法等の関係にはなく、一方が他方の適用を排除することはない。
重要事実
被告人は昭和27年5月4日、婦女に売淫をさせることを内容とする契約を締結した。これに対し、婦女に売淫をさせる契約を処罰する昭和22年勅令9号2条が適用されたが、被告人側は、公衆衛生等に有害な業務への職業紹介等を処罰する職業安定法63条2号が優先的に適用されるべきであり、勅令の適用は排除されるべきであると主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)6755 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年勅令第九号第二条にいわゆる「婦女に売淫をさせることを内容とする契約」とは、その契約の相手方が当該婦女であると否とを問わず結局において直接又は間接に多かれ少かれ婦女を束縛または強制して売淫をさせる結果を招来し婦女の個人的自由の伸張を阻害すべき内容を有する契約を指称するものである。
あてはめ
昭和22年勅令9号2条は「婦女に売淫をさせることを内容とする契約をした者」を処罰する規定である。対して、職業安定法63条2号は「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」での職業紹介等を処罰する規定である。これらを比較すると、取締の目的(個人の自由・尊厳の保護か、適正な労働市場の形成・維持か)や、処罰対象となる行為の内容(契約締結そのものか、紹介行為等か)といった性質を異にする。したがって、両規定は特別法や例外法という排他的な関係にはないといえる。
結論
職業安定法63条2号によって昭和22年勅令9号2条の適用が排除されることはなく、本件行為に同勅令を適用した原判決に誤りはない。
実務上の射程
法条競合(特別法・一般法関係)の成否を判断する際、「取締目的」「行為の内容」「性質」を比較検討する枠組みとして活用できる。特に、保護法益や行為態様の重なりが認められる複数の処罰規定の適用関係を論じる際の論拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)2905 / 裁判年月日: 昭和25年3月16日 / 結論: 棄却
昭和二二年勅令第九號は婦女の個人自由の伸張を圖るため「暴行又は脅迫によらないで婦女を困惑させて賣淫させた者」(一條)及び「婦女に賣淫をさせることを内容とする契約にしたもの」(二條)に對する處罰を定めている。所論は、この後者の場合において「當該婦女側には契約なかりせば賣淫せざりしなるべしとの關係の存すること」を絶對必要要…
事件番号: 昭和25(あ)2801 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】婦女に売淫させることを内容とする契約を締結する罪は、当該契約が成立した時点で既遂に達し、婦女の自由意思による売淫の有無は犯罪の成立を左右しない。 第1 事案の概要:被告人は、Bとの間で、売春による収益を折半するとの約束の下、Bに売淫させることを内容とする契約を締結した。弁護人は、Bが自由意思によっ…
事件番号: 昭和25(あ)2689 / 裁判年月日: 昭和26年6月28日 / 結論: 棄却
昭和二二年勅令第九号第二条違反の罪を判示するには、婦女に売淫させることを内容とする契約をしたことを示せば足り、その具体的契約内容すなわち、報酬の有無、契約期間、売淫の場所等を判示する必要はない。
事件番号: 昭和29(あ)3497 / 裁判年月日: 昭和32年9月27日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年勅令第九号第二条にいう「売淫」は、対価を受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいうものと解すべきである。 二 法律上の妻または事実上の妻でなくして、主として妻帯の男性から経済上の援助を受けて、これと性的結合関係を継続する女、いわゆる妾の斡旋はそれが特定の男女間に関する限り右勅令第二条の対…