昭和二二年勅令第九号第二条違反の罪を判示するには、婦女に売淫させることを内容とする契約をしたことを示せば足り、その具体的契約内容すなわち、報酬の有無、契約期間、売淫の場所等を判示する必要はない。
昭和二二年勅令第九号第二条違反罪の判示方法
昭和22年勅令9号2条,刑訴法335条1項
判旨
婦女に売淫をさせることを内容とする契約を締結した事実は、報酬や期間等の具体的詳細を欠いていても認定可能であり、かつ当該契約の有償・無償を問わず処罰の対象となる。
問題の所在(論点)
婦女に売淫をさせることを内容とする契約(売淫契約)の成立を認定するにあたり、報酬・期間・場所といった具体的な契約内容までを判示する必要があるか。また、当該契約に有償性は必要か。
規範
「婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令」第2条にいう「契約をした者」とは、婦女に売淫をさせることを内容とする契約をした者であれば足り、その契約が有償であるか無償であるかを問わない。また、犯罪構成要件としての事実判示において、報酬、期間、場所といった具体的な契約内容の詳細までを必ずしも釈明・判示する必要はない。
重要事実
被告人は、自身の営業状態および犯罪の経緯に関連して、ある婦女との間で、同女に売淫をさせることを内容とする契約を締結した。第一審判決は、被告人の営業状況や本件犯罪の原因・経過を詳細に認定した上で、売淫をさせる契約の存在を認定したが、弁護人は報酬や期間、場所といった具体的な契約内容が判示されていないことを不服として上告した。
事件番号: 昭和27(あ)6755 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年勅令第九号第二条にいわゆる「婦女に売淫をさせることを内容とする契約」とは、その契約の相手方が当該婦女であると否とを問わず結局において直接又は間接に多かれ少かれ婦女を束縛または強制して売淫をさせる結果を招来し婦女の個人的自由の伸張を阻害すべき内容を有する契約を指称するものである。
あてはめ
第一審判決は、被告人の営業や本件犯罪に至る詳細な経緯を認定しており、その一環として売淫をさせる内容の契約がなされたことを明瞭に判示している。本条の趣旨に照らせば、売淫をさせる合意が存在すれば足り、対価の有無(有償・無償)は成否に影響しない。したがって、判決において具体的かつ細部(報酬・期間等)にわたる契約条件までを特定・釈明しなくとも、犯罪事実の認定として欠けるところはないといえる。
結論
売淫契約の成立認定に際し、報酬等の詳細な内容の判示は不要であり、無償の契約であっても処罰の対象となる。本件第一審判決に法律上の解釈・適用の誤りはない。
実務上の射程
風俗事犯や性搾取事犯における「契約」の認定において、民事上の厳格な契約要素(代金等)の特定を待たず、実態としての売淫の合意があれば足りるという判断基準を示す。公訴事実の特定や判決書の事実適示において、どの程度の具体性が求められるかという実務上の限界を画するものである。
事件番号: 昭和24(れ)2905 / 裁判年月日: 昭和25年3月16日 / 結論: 棄却
昭和二二年勅令第九號は婦女の個人自由の伸張を圖るため「暴行又は脅迫によらないで婦女を困惑させて賣淫させた者」(一條)及び「婦女に賣淫をさせることを内容とする契約にしたもの」(二條)に對する處罰を定めている。所論は、この後者の場合において「當該婦女側には契約なかりせば賣淫せざりしなるべしとの關係の存すること」を絶對必要要…
事件番号: 昭和25(あ)2801 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】婦女に売淫させることを内容とする契約を締結する罪は、当該契約が成立した時点で既遂に達し、婦女の自由意思による売淫の有無は犯罪の成立を左右しない。 第1 事案の概要:被告人は、Bとの間で、売春による収益を折半するとの約束の下、Bに売淫させることを内容とする契約を締結した。弁護人は、Bが自由意思によっ…
事件番号: 昭和29(あ)3497 / 裁判年月日: 昭和32年9月27日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年勅令第九号第二条にいう「売淫」は、対価を受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいうものと解すべきである。 二 法律上の妻または事実上の妻でなくして、主として妻帯の男性から経済上の援助を受けて、これと性的結合関係を継続する女、いわゆる妾の斡旋はそれが特定の男女間に関する限り右勅令第二条の対…
事件番号: 昭和26(あ)3760 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年勅令第九号第二条にいわゆる「婦女に売淫をさせることを内容とする契約」は婦女の自由意思による売淫の場合をも処罰する趣旨である。