判旨
控訴趣意書の提出期限経過後に国選弁護人が選任された場合であっても、被告人が自ら期限内に趣意書を提出し、かつ弁護人が公判期日で当該趣意書に基づき異議なく弁論したときは、憲法37条3項に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴趣意書の提出期限までに国選弁護人が選任されず、被告人が自ら趣意書を提出した後に弁護人が選任された手続が、憲法37条3項(弁護人依頼権)に違反するか。
規範
被告人が自ら控訴趣意書を提出できる状態にあり、かつ選任された弁護人がその趣意書の内容を前提として効果的な弁論を行い得る状況にあるならば、提出期限後の弁護人選任であっても、被告人の弁護人依頼権(憲法37条3項)や適正手続きを実質的に侵害したものとは評価されない。また、裁判所による特段の弁護人選任照会手続きの欠如も、直ちに憲法違反とはならない。
重要事実
被告人は控訴提起後、裁判所から控訴趣意書の提出期限(昭和28年4月14日)の指定を受けた。被告人は自ら期限内に趣意書を提出できる時期に弁護人選任の請求をせず、同年3月20日に自ら趣意書を作成・提出した。原審は期限後の5月25日に国選弁護人を選任したが、当該弁護人は翌日の公判期日に出頭し、被告人が提出した趣意書に基づいて異議なく弁論を行った。
あてはめ
まず、被告人は提出期限の指定を受けながら、自ら適当な時期に弁護人選任請求を行わず、自ら趣意書を作成・提出していることから、裁判所が弁護人選任を妨げた事実は認められない。次に、期限後に選任された国選弁護人は、公判期日において被告人作成の趣意書に基づき異議なく弁論を遂行しており、弁護権の行使が実質的に保障されているといえる。したがって、選任時期が提出期限後であることや、事前の選任照会がなかったことは、被告人の防御権を不当に制限するものとは解されない。
結論
本件における原審の手続は、憲法37条3項に違反するものではなく、適法である。
実務上の射程
国選弁護人の選任遅延が憲法違反となるか否かの判断基準を示す。被告人自身の対応(自ら提出したか等)や弁護人の法廷での活動(異議の有無)が重視されるため、実務上は「被告人に実質的な不利益が生じているか」という観点から、弁護権保障の空文化の有無を検討する際に用いる。
事件番号: 昭和25(あ)2153 / 裁判年月日: 昭和28年4月1日 / 結論: 棄却
一 刑訴規則第一七八条により裁判所のなす弁護人選任の照会手続は、憲法第三七条第三項前段の要請にもとずくものでない。 二 被告人による弁護人選任の請求がその責に帰すべき事由により控訴趣意書の提出期限に近接していて、期間内に控訴趣意書を提出できるような適当な時期になされなかつた場合には、たとえ裁判所が控訴趣意書の提出期限後…