判旨
虚偽公文書作成罪の成否において、公務員が職務執行の意思を持って作成した事実は認められず、被告人が後日書類を追完する旨の確約を信じて廃車証明書を作成・発行した事実は否定された。
問題の所在(論点)
被告人が廃車証明書を作成・発行した際、後日書類が追完されることを信じて「職務行為を行う意思」をもって作成したといえるか。すなわち、虚偽公文書作成罪の主観的態様が問題となる。
規範
虚偽公文書作成罪(刑法156条)の成否に関し、作成権限を有する公務員が、その職務を遂行する正当な意思に基づき、内容が客観的事実に反する公文書を作成・発行したか否かは、当該公務員の具体的な認識および意思決定の内容に基づき判断される。
重要事実
被告人は自動車の廃車証明書を発行する職務に従事していた。本件では、廃車手続に必要な書類が欠けていたにもかかわらず、後日追完する旨の確約を信じて廃車証明書を作成・発行したと主張したが、原審はそのような意思に基づく作成事実を認めなかった。被告人は量刑の不当および判例違反を理由に上告した。
あてはめ
原判決において、被告人が「手続上必要な書類は後日追完提出する旨の確約に信を措き本件廃車証明書を作成発行する職務行為を行う意思」をもって当該証明書を作成・発行したという事実は認められなかった。最高裁もこの事実認定を前提とすると、被告人の主張は前提を欠くものと解される。
結論
被告人の主張する事実は認められず、職務執行の意思に基づかない作成行為として、上告を棄却した。
実務上の射程
虚偽公文書作成罪における「職務執行の意思」の有無に関する事実認定の重要性を示す。答案上は、公務員による不適切な公文書作成が、適法な職務執行の仮装にすぎない場合の主観的態様の検討に活用できるが、本判決自体は事実認定を理由とした棄却である点に注意を要する。
事件番号: 昭和31(あ)153 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)の客体である「公務員がその職務に関し作成すべき文書」とは、公務員が職務権限に基づき作成する文書全般を指し、その内容や形式は限定されない。 第1 事案の概要:被告人が関与した特定の文書(本件文書)について、これが刑法156条に規定される「公務員の職務に関する文書」に該…
事件番号: 昭和28(あ)1670 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
物品税証紙は刑法第一五五条第三項の文書に該当する。
事件番号: 昭和26(れ)283 / 裁判年月日: 昭和26年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、弁護人の上告趣意が刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して職権で判決を取り消すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:本件の上告人は、弁護人を通じて上告趣意を提出したが、具体的な事案の内容や下級審の判断、上告趣意の詳細について…