本件文書を有印公文書にあたるとした原判断は正当と認める。 (本件文書)A株式会社が神戸税関において、船用品積込の承認を受けた際、同税関から下付を受けて所持していた、昭和三五年一月六日リベリア国籍貨物船C号にドライドホースマツカレル(Dried Horse―Mackerel)五〇ポンド七、五〇〇円相当を積み込むことの承認申請を同日同税関が受け付け、かつこれを承認したことを証明する、同税関作成名義の許可・神戸税関という文字及び日付等を刻した丸型スタンプ印並びに係官個人印の各押捺及び右丸型スタンプ印による契印の行われている船用品(機用品)積込承認申請書と題する文書一通(同会社取締役社長B作成名義の右内容の船用品積込承認申請書に同税関の右許可印が押捺されているもの、昭和三六年押第六二八号の一の二のうち昭和三五年一月六日付、申請番号兵四三のものは、これに追加(変造部分)記入をしたもの。) なお、右文書は神戸税関において乗船官吏がその権限に基づき慣行上の職務として、船積確認の上、乗員官吏に収納される承認書に代えて、前記会社に下付されたもの(第一審判決理由参照)。
刑法第一五五条第二項所定の有印公文書にあたるとされた事例。
刑法155条1項,刑法155条2項,関税法23条,関税法26条,関税法基本通達(昭和29年税蔵2116号)3―23―1
判旨
公務員以外の者が作成した文書であっても、その内容や性質に照らして公務所または公務員が職務上作成すべきものと認められる場合には、刑法上の公文書に該当する。
問題の所在(論点)
公務員以外の者が作成名義人となっている文書について、刑法155条の「公務所若しくは公務員が職務上作成すべき文書」(公文書)に該当するといえるか。
規範
公文書(刑法155条)とは、公務所または公務員がその職務上作成すべき文書をいう。作成名義人が公務員であるか否かのみならず、当該文書の性質、内容、および作成の目的等に照らし、実質的に公務員の職務権限に基づいて作成されたものと認められるかによって判断すべきである。
事件番号: 昭和38(あ)907 / 裁判年月日: 昭和39年8月28日 / 結論: 破棄差戻
刑法第一五五条第一項にいわゆる公務所または公務員の作るべき文書とは、公務所又は公務員が印章若しくは署名を使用しその権限内において職務執行上作成すべき文書を汎称し、その職務執行の方法範囲が法令に基づくと内規又は慣例によるとを問わないものと解すべきである(昭和一二年七月五日大審院判決、刑集一六巻一一七六頁・明治四五年四月一…
重要事実
被告人が、本来公務員が職務上作成すべき性質を有する文書(本件文書)を、公務員以外の者の名義を用いて作成した。原審は、当該文書の性質から有印公文書にあたると判断し、被告人側はこれを不服として上告した。
あてはめ
本件文書は、その記載内容や作成の経緯に照らせば、公務所または公務員が職務上作成すべき文書としての実質を備えている。したがって、形式上の名義人が公務員でないとしても、公文書としての公共的信用を保護すべき対象に含まれると解するのが相当である。
結論
本件文書を有印公文書にあたるとした原判断は正当であり、刑法155条の有印公文書偽造罪が成立する。
実務上の射程
文書偽造罪における「公文書」の意義について、形式的な名義だけでなく実質的な職務権限や文書の性質を重視する判断枠組みを示している。答案上は、補助公務員による作成や、公的な事務を代行して作成される文書の公文書性を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和39(あ)273 / 裁判年月日: 昭和39年6月11日 / 結論: 棄却
一 第一審判決判示第一前段の被告人の所為が有印公文書偽造罪にあたるとした原判決の判断は正当である。 二 (第一審判決判示第一前段の要旨)被告人は昭和三四年一二月八日付神奈川県公安委員会がAに発行した小型自動四倫運輪免許一通をほしいままに、同免許証の氏名欄の「A」、生年月日欄の「大正15・11・19」、本籍欄の「栃木県真…
事件番号: 昭和32(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)等における「公文書」とは、公務員がその職務上作成すべき文書を指し、その形式や名称の如何を問わず、実質的に公務員の職務権限に基づき作成されたものであればこれに該当する。 第1 事案の概要:本件は、被告人らが共謀し、公文書を偽造(虚偽記載)し、これを行使したとして虚偽公…
事件番号: 昭和29(あ)3426 / 裁判年月日: 昭和32年11月29日 / 結論: 棄却
所論指示書と題する文書の内容文言が、たとえ被告人以外の者の手で既に記載されてあつた場合であつても、それが無権限者によつてなされたものであり、且つa地方事務所長たる記名職印が施されてはじめて効用ある文書として完成するものであると認められる以上、行使の目的をもつて右文言の書面に無権限に右事務所長名の記名ゴム印及びその職印を…
事件番号: 昭和31(あ)17 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
A法務社岸和田支局またはB地方法務新聞宇治山田支局各名義の各船舶登記証書を作成した場合においても、A法務社岸和田支局なる印の「社」およびB地方法務新聞宇治山田支局之印なる印の「新聞」という各文字の処を殊更に不鮮明に押捺し、各その形式外観によつて、一般人をしてA法務局岸和田支局またはB地方法務局宇治山田支局が権限により作…