判旨
本判決は、昭和25年11月29日大法廷判決の趣旨を再確認し、被告人の自白のみに基づき犯罪の証明がなされたとしても、憲法38条3項等に違反しないことを示し、上告を棄却した。
問題の所在(論点)
被告人の自白以外の補強証拠が不十分なまま有罪判決を下すことが、憲法38条3項および刑事訴訟法上の証拠法則(採証法則)に違反しないか。
規範
自白の補強証拠の要否および範囲については、昭和24年(れ)第829号、同25年11月29日大法廷判決の判示するところにより、実質的な証拠法則(補強法則)の解釈枠組みに従う。憲法38条3項の「本人に不利益な唯一の証拠」とは、補強証拠が存在しない場合を指し、自由心証主義と相まって、供述の真実性を担保するに足りる補強があれば足りる。
重要事実
被告人が刑事事件において有罪の判決を受けたが、その有罪認定が被告人の自白のみに基づくものであり、憲法38条3項(何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない)に反するとして、弁護人が上告を申し立てた事案である。
あてはめ
最高裁判所は、昭和25年の大法廷判決の趣旨を引用し、原審における証拠採用の手続が正当であることを確認した。記録に照らしても、採証法則に違反するような事実誤認や、刑訴法411条を適用して判決を破棄すべき著しい不当性は認められない。したがって、憲法違反の主張には理由がないと判断された。
結論
本件上告には理由がないため、棄却される。被告人の自白に加え、正当な証拠調べに基づき有罪認定がなされた原判決に違法はない。
実務上の射程
自白の補強法則に関するリーディングケース(昭和25年大法廷判決)を維持した極めて簡潔な判決であり、答案上は補強証拠の要否を論じる際の判例の確立性を裏付けるものとして位置づけられる。
事件番号: 昭和31(あ)3825 / 裁判年月日: 昭和34年7月7日 / 結論: 棄却
一 憲法第三八条第三項にいう「本人の自白」には、その判決をした裁判所の公判廷における被告人の自白を含まない。 二 証言並びに犯則物件鑑定表によつて同表記載の物件が関税未納のまま蔵置されていた事実が認められる以上、被告人が関税未納物件を他に庫出して関税を逋脱したという自白の補強証拠として十分である。 三 施設保税倉庫に蔵…
事件番号: 昭和57(あ)568 / 裁判年月日: 昭和57年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白について、原判決が認定に用いた他の証拠によって十分な補強がなされている場合には、憲法38条3項(自白のみによる処罰の禁止)に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の自白が存在し、それに基づき有罪判決が下された事案において、弁護人が「自白は補強されていない」として、憲法38条3項違反(補…
事件番号: 昭和28(あ)139 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項が自白に補強証拠を要求する趣旨は、客観的事実の実在を担保することにあるため、主観的要素である知情(故意)の点については、特段の補強証拠を要しない。 第1 事案の概要:被告人は犯罪事実について自白していたが、弁護人は、被告人の主観的な知情(故意)の点について自白を補強する証拠が欠けてい…