判旨
大学内で行われた学生運動に伴う建造物侵入等の行為は、学問の自由や大学の自治を理由に当然に違法性が阻却されるものではなく、刑事罰の対象となり得る。
問題の所在(論点)
大学内における学生運動に伴う建造物への立入り行為が、大学の自治や学問の自由(憲法23条等)を背景とする場合に、建造物侵入罪の成否にどのような影響を与えるか。また、かかる行為が「純然たる学園の自治に属する事件」として刑罰権の行使から免除されるか。
規範
大学の自治は憲法上の保障を受けるが、その範囲内であっても、犯罪構成要件に該当する行為が行われた場合、当然に刑罰法規の適用が排除されるものではない。大学内における建造物侵入等の行為が正当な業務ないし正当な表現活動として違法性を阻却するか否かは、具体的な態様や目的に照らし、刑法上の違法性評価の枠組みに従って判断される。
重要事実
被告人らは、レッドパージによる教授追放に反対する学生運動の一環として、大学の建造物に立ち入り、建造物侵入罪等に問われた。弁護側は、本件が学問の独立、良心の自由、および大学の自治に基づく正当な活動であり、刑法上の違法評価の対象外であると主張して上告した。しかし、原審はこれらの行為につき建造物侵入罪等の成立を認め、共同正犯としての責任を肯定していた。
あてはめ
最高裁は、本件が大学の自治に属する純然たる事件であり違法性がないとする主張を「独自の見解」として退けた。原審が認定した事実に照らせば、被告人らの行為は建造物侵入罪等の構成要件に該当し、かつ共同正犯としての連関も認められる。学問の自由や自治を標榜する場合であっても、現行法上の犯罪を構成する態様でなされた以上、実刑法上の違法性は阻却されないと判断した。
結論
被告人らの行為に建造物侵入罪等の成立を認め、共同正犯の責任を肯定した原判決に憲法違反や法令違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
大学の自治を理由とする刑罰権の制限については、後の「東大ポポロ事件(最判昭38.5.22)」等でより詳細な規範が示されるが、本判決はその先駆けとして、大学内といえども犯罪行為には刑事法が適用される原則を確認したものである。答案上は、大学の自治の限界や、表現の自由の行使としての違法性阻却を論じる際の否定例として活用できる。
事件番号: 昭和61(あ)1311 / 裁判年月日: 平成3年11月28日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和57(あ)347 / 裁判年月日: 昭和60年11月15日 / 結論: 棄却
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