教職員組合員らによる建造物侵入,公務執行妨害等の所為について違法性に欠けるところはないとされた事例
刑法95条1項,刑法130条,刑法204条,刑法208条,暴力行為等処罰に関する法律1条
判旨
争議行為等の労働組合活動が正当性を有し違法性を欠くというためには、その動機や目的のいかんにかかわらず、態様が社会通念上許容される限度を超えないものでなければならない。
問題の所在(論点)
労働組合活動として行われた行為が、憲法28条及び刑法35条の「正当な業務」として違法性を阻却されるための判断基準、特に手段・態様の相当性の要否が問題となる。
規範
労働組合活動としての正当性を有し、刑法35条により違法性が阻却されるためには、当該行為の動機・目的が正当であるのみならず、その手段・態様が社会通念上許容される限度を超えないものであることを要する。
重要事実
被告人らは労働組合活動の一環として何らかの行為(具体的な実行行為の内容は判決文からは不明)に及んだが、その態様が激しいものであったため、刑罰法規に抵触するとして起訴された。被告人側は、憲法28条に基づく争議権の行使等であり正当な業務行為であると主張して上告した。
あてはめ
本件における被告人らの各行為は、仮にその動機や目的が労働組合活動として正当なものであったとしても、その具体的態様が「社会通念上許容される限度を明らかに逸脱している」と評価される。このように手段の相当性を欠く以上、正当な業務行為としての枠内にとどまるものとはいえず、違法性は阻却されない。
事件番号: 昭和41(あ)616 / 裁判年月日: 昭和42年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は正当な労働組合活動にのみ認められるものであり、暴力の行使に至る行為は正当な範囲を逸脱するため、免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合活動の一環として行動したが、その過程において暴力を行使するに至った。弁護人は、改正前の公共企業体等労働関係法4条…
結論
被告人らの行為は違法性に欠けるところはないとした原判断は正当であり、有罪とした結論は維持される。
実務上の射程
労働刑法の分野において、争議行為の正当性の限界を判断する際のリーディングケースである。答案上は、目的の正当性だけでなく「手段の相当性」を独立した要件として検討し、態様の過激さを理由に違法性阻却を否定する際の規範として活用する。
事件番号: 昭和38(あ)223 / 裁判年月日: 昭和39年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条が保障する団体行動権であっても、使用者側の自由意思を剥奪または極度に抑圧するような行為は許容されない。労働組合法1条2項による刑罰阻却も正当な行為に限られ、暴行罪等に当たる行為には適用されない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働争議の一環として団体交渉等の団体行動を行った際、暴行罪や住…
事件番号: 昭和39(あ)511 / 裁判年月日: 昭和39年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合活動であっても、不当な有形力の行使を伴う監禁行為や住居侵入行為は、憲法28条によって保障される正当な組合活動の範囲を逸脱し、違法性を有する。 第1 事案の概要:被告人Aが組合活動の一環として監禁行為を行い、被告人BおよびCが住居侵入行為を行った事案。一審では無罪判決が下されたが、原審(二審…
事件番号: 昭和35(あ)861 / 裁判年月日: 昭和39年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条の団体行動権の保障は無制限ではなく、使用者に対する団体交渉において刑法上の暴行罪等に当たる行為が行われた場合には、正当な業務行為として刑事責任を免れることはできない。 第1 事案の概要:被告人らは、使用者との団体交渉において、刑法上の暴行罪等に該当する行為に及んだ。被告人らは、これらの行…
事件番号: 昭和41(あ)1424 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基本権を保障する憲法28条の下においても、争議行為等に伴う暴行・脅迫等の違法な行為について正当防衛(刑法36条1項)が成立するためには、急迫不正の侵害に対し、自己又は他人の権利を防衛するため「やむを得ずにした行為」といえることが必要である。 第1 事案の概要:被告人らは、労働争議の一環として行…