判旨
労働組合法1条2項の刑事免責は正当な労働組合活動にのみ認められるものであり、暴力の行使に至る行為は正当な範囲を逸脱するため、免責の対象とならない。
問題の所在(論点)
労働組合活動に伴い暴力が行使された場合に、労働組合法1条2項の刑事免責規定が適用され、違法性が阻却されるか。
規範
労働組合法1条2項により刑事免責が認められるためには、当該行為が「労働組合の正当な行為」であることが必要である。正当性の判断にあたっては、目的の正当性のみならず、手段の正当性も要求される。具体的には、暴力の行使に至るような手段は、特段の事情のない限り、労働組合活動としての正当な範囲を逸脱するものと解すべきである。
重要事実
被告人らは、労働組合活動の一環として行動したが、その過程において暴力を行使するに至った。弁護人は、改正前の公共企業体等労働関係法4条3項の違憲性や、労働組合法1条2項に基づく刑事免責を主張して上告した。原判決は、被告人らの行為は暴力の行使にあたり、正当な組合活動の範囲を逸脱していると認定していた。
あてはめ
本件における被告人らの所為は、原判決の認定によれば「暴力の行使」に当たる。刑事免責の趣旨は、正当な団体交渉等の手段を保障する点にある。しかし、暴力の行使は、いかなる労働組合活動の目的があったとしても、法秩序全体から見て許容される正当な手段の範囲を明らかに逸脱している。したがって、本件行為は「正当な行為」とはいえず、刑事免責を受けるための要件を欠いている。
結論
被告人らの行為に労働組合法1条2項の適用はないとした原判断は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和41(あ)617 / 裁判年月日: 昭和42年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は、労働組合の正当な行為についてのみ認められるものであり、暴力の行使に及ぶ行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱するため、刑事免責の規定は適用されない。 第1 事案の概要:被告人は、労働組合活動の一環として本件行為に及んだが、その態様は暴力の行使を伴うものであった。第一審お…
労働基本権の行使であっても、手段としての暴力は正当性を否定する決定的要素となることを示した。答案上は、労働組合法1条2項の免責が問題となる際、手段の相当性(特に非暴力の原則)を検討する局面で引用すべき重要な準拠枠組みである。
事件番号: 昭和42(あ)1431 / 裁判年月日: 昭和42年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項が定める刑事免責の対象となる労働組合の正当な行為には、暴力の行使は含まれない。 第1 事案の概要:被告人が労働組合活動の一環として行為に及んだ際、その行為態様が身体に対する不当な力の行使を伴うものであった事案。第一審判決において、被告人の本件所為が「暴力の行使」であることが事実認…
事件番号: 昭和41(あ)1510 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反してなされた争議行為であっても、労働組合法1条2項の適用は排除されないが、暴力の行使を伴う行為は正当性の限界を越えるため刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、公共企業体等労働関係法17条1項の規定に違反して争議行為を行った。その際、被告人ら…
事件番号: 昭和61(あ)1311 / 裁判年月日: 平成3年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】争議行為等の労働組合活動が正当性を有し違法性を欠くというためには、その動機や目的のいかんにかかわらず、態様が社会通念上許容される限度を超えないものでなければならない。 第1 事案の概要:被告人らは労働組合活動の一環として何らかの行為(具体的な実行行為の内容は判決文からは不明)に及んだが、その態様が…
事件番号: 昭和42(あ)493 / 裁判年月日: 昭和42年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法上の正当な争議行為といえるためには、その手段・態様が社会通念上相当な範囲に留まる必要がある。本件では、被告人らの行為は正当性の限界を逸脱したものとして、刑事責任を免れないと判断された。 第1 事案の概要:判決文からは具体的な事実関係の詳細は不明であるが、労働組合員等である被告人らが、争議…