最高裁判所により破棄された高裁の判決は、刑訴法四〇五条三号にいう判例にあたらない。
最高裁判所の判決により破棄された高等裁判所の判決と刑訴法四〇五条三号にいう判例
刑訴法405条3号「
判旨
大学における学生の団体交渉や滞留行為が、集団の実力をもって建物に進入し、その勢威を利用して強いて会見・交渉を求めるものである場合には、手段・方法としての相当性を欠き、正当な行為として免責されない。
問題の所在(論点)
学生が大学当局との交渉を求めて学内施設に滞留する行為について、憲法23条(学問の自由)等の観点から、刑法上の違法性が阻却されるための要件、特に手段の相当性が問われた。
規範
学生による交渉権の行使やこれに伴う滞留行為が憲法23条等の趣旨に照らして正当化されるためには、その目的において正当であるのみならず、手段および方法において社会通念上許容される相当性を有していなければならない。
重要事実
被告人ら学生は、A大学学長との会見および交渉を目的として、集団の実力を用いて同大学の事務局庁舎内に進入し、そのまま同所に滞留し続けた。この行為は、単なる交渉の申し入れにとどまらず、集団の勢威を背景に利用して学長に対し強硬に会見を迫る態様で行われたものであった。
事件番号: 昭和28(あ)2710 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大学内で行われた学生運動に伴う建造物侵入等の行為は、学問の自由や大学の自治を理由に当然に違法性が阻却されるものではなく、刑事罰の対象となり得る。 第1 事案の概要:被告人らは、レッドパージによる教授追放に反対する学生運動の一環として、大学の建造物に立ち入り、建造物侵入罪等に問われた。弁護側は、本件…
あてはめ
本件における被告人らの行為は、単に交渉を求めるにとどまらず、集団の実力をもって事務局庁舎に立ち入り、その勢威を背景として学長に会見を強いたものである。このような実力行使を伴う態様は、大学の自治や学問の自由の要請を考慮したとしても、手段・方法として著しく相当性を欠くといえる。したがって、当該滞留行為は正当な業務の範囲内とは認められず、違法性が阻却されない。
結論
被告人らの滞留行為は相当性を欠くため、刑法上の犯罪(建造物不退去罪等)が成立し、有罪とする原判決の判断は妥当である。
実務上の射程
学問の自由や大学の自治を背景とした学生運動の刑事責任が問われる事案において、目的の正当性があっても「集団の実力・勢威の利用」があれば相当性を否定する枠組みとして活用できる。答案上は、憲法23条の保障範囲を確認した上で、違法性阻却事由の検討において、手段の相当性を判断する際の考慮要素として本判例のロジックを援用する。
事件番号: 昭和43(あ)1046 / 裁判年月日: 昭和48年7月24日 / 結論: 棄却
特定の大学の管理に属しないで、一般に大学に在籍する学生に居住の場を提供している施設を利用する学生が、その居住生活に関して行なういわゆる自治活動は、それ自体としては大学の学生として享有する学問の自由と直接関係のないものである。
事件番号: 昭和32(あ)212 / 裁判年月日: 昭和34年6月5日 / 結論: 棄却
鉱山会社とその労働組合との賃金問題等に関する団体交渉が同会社のクラブ内会議室において開始され、その交渉が深夜一旦休憩に入つた際、交渉の行き詰つたことを聞知して憤慨した労組員らが、右クラブの表門を通つて同クラブ玄関にいたり、会社側係員および組合幹部の阻止するのを排し、強いて土足のまま玄関より屋内に乱入した所為は、労働組合…
事件番号: 昭和57(あ)347 / 裁判年月日: 昭和60年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】学校長が管理権に基づき立入りを禁止した校内に、反対運動の目的で門扉を乗り越えて侵入する行為は、動機や目的が正当であったとしても、手段の相当性を欠き正当行為として違法性が阻却されることはない。 第1 事案の概要:被告人は、いわゆる養護学校義務制に反対する運動に従事していた。その過程において、東京都足…