判旨
裁判の迅速(憲法37条1項)を欠いたとしても、それが直ちに判決に影響を及ぼす憲法違反にはならない。また、累犯加重や被告人への訴訟費用負担は、憲法39条や37条2項に反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、(1)審理の遅延が判決に影響を及ぼす憲法違反となるか、(2)累犯加重規定が憲法39条に、訴訟費用の被告人負担が憲法37条2項にそれぞれ違反し違憲となるかが問題となった。
規範
1. 憲法37条1項の「迅速な裁判」を欠く事態があったとしても、それが直ちに判決に影響を及ぼす憲法違反を構成するものではない。 2. 累犯加重の規定(刑法)は、二重処罰の禁止(憲法39条)に抵触せず合憲である。 3. 証人の費用等の訴訟費用を被告人に負担させることは、証人尋問権(憲法37条2項)を侵害せず合憲である。
重要事実
被告人は第一審判決後、控訴審を経て上告。弁護人は、(1)原審の審理が迅速を欠き憲法37条1項に違反すること、(2)刑法の累犯加重規定が憲法39条の二重処罰禁止に反すること、(3)証人の費用を被告人の負担としたことが憲法37条2項に反することを主張して上告した。記録上、本件の控訴審は記録送付から約2.5か月で判決に至っていた。
あてはめ
1. 審理の迅速性について、本件では記録送付から約2か月半で判決が言い渡されており、客観的に極めて迅速な審理が行われている。また、仮に迅速を欠く場合であっても、それが判決内容そのものに影響を及ぼす憲法違反とはいえない。 2. 累犯加重について、過去の判例に照らし、現行刑法の規定は憲法39条に違反しない。 3. 訴訟費用について、被告人に証人費用を負担させることは、公費による証人尋問権を保障した憲法37条2項の趣旨に反するものではない。
結論
本件における審理に憲法違反は認められず、累犯加重および訴訟費用の負担を命じた判断も合憲であるため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和48(あ)1406 / 裁判年月日: 昭和48年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する裁判の迅速を欠いたといえるか否かは、訴訟の経過に照らして審判が不当に遅延したといえるかどうかによって判断される。本件では、訴訟経過に鑑み、第1審及び原審の審判が迅速を欠いたとは認められず、憲法違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が第1審及び原審の審判において、憲法…
実務上の射程
刑事手続の各段階における憲法適合性を確認した判例である。特に迅速な裁判(憲法37条1項)の論点については、後に示される「高田事件」判決等との関係で、具体的な遅延の程度や救済手段(免訴の可否等)を検討する際の基礎的な法理として位置づけられる。
事件番号: 昭和28(あ)4639 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が定める「公平な裁判所」とは、裁判官が被告人と個人的な利害関係を持つ等の不偏不党性を欠く状態にない組織を指し、当事者が主観的に不公平と感じるか否かによって決まるものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として、憲法37条1項の保障する「公平な裁判所…
事件番号: 昭和37(あ)1066 / 裁判年月日: 昭和37年10月26日 / 結論: 棄却
本件被告事件につき、第一審の有罪判決が言い渡され、被告人から控訴の申立をなし、第一審の大分地裁日田支部から原審の福岡高等裁判所え一件記録が送付せられる迄二年五ケ月以上を経過していること、その遅延した理由が第一審担当事務官の過失によるものであることは所論のとおりであるが右の如き事情で裁判の迅速を欠いたとしても、これにより…
事件番号: 昭和25(あ)3181 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判が迅速を欠き憲法37条1項に違反する場合であっても、それが判決に影響を及ぼさないことが明らかであれば、原判決の破棄理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが上告した事案において、被告人Aの弁護人は、裁判が迅速を欠いたことが憲法37条1項に違反する旨を主張して原判決の破棄を求めた。…
事件番号: 昭和55(あ)2181 / 裁判年月日: 昭和56年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一の犯罪について二重に処罰するものでない限り、量刑上の不利益が生じても憲法39条の二重処罰禁止の規定には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、量刑の不当性や憲法14条・39条違反を主張した事案。弁護人は、本件の処罰が二重処罰にあたると主張して上告したが、具体的な事案の詳細は本決…