判旨
裁判が迅速を欠き憲法37条1項に違反する場合であっても、それが判決に影響を及ぼさないことが明らかであれば、原判決の破棄理由とはならない。
問題の所在(論点)
裁判の遅延が憲法37条1項に違反する場合、直ちに原判決を破棄すべき事由(刑事訴訟法405条、411条等)となるか。
規範
憲法37条1項が保障する迅速な裁判の権利に違反する事態が生じたとしても、当該違反が判決の結論に影響を及ぼさないことが明白である場合には、刑事訴訟法上の控訴理由または上告理由としての原判決破棄事由には当たらない。
重要事実
被告人AおよびBが上告した事案において、被告人Aの弁護人は、裁判が迅速を欠いたことが憲法37条1項に違反する旨を主張して原判決の破棄を求めた。また、被告人Bの弁護人は、検察官の冒頭陳述の不備や、証拠同意の手続における違法等を主張した。
あてはめ
最高裁判所の判例(昭和23年12月22日大法廷判決)の趣旨に照らせば、仮に裁判が迅速を欠き憲法に違反する状態にあったとしても、そのことが判決の妥当性や内容に影響を及ぼさないことは明らかである。したがって、本件における遅延が憲法違反にあたるか否かにかかわらず、それは原判決を破棄すべき正当な理由にはなり得ない。
結論
本件各上告を棄却する。裁判の迅速性の欠如は、判決に影響を及ぼさないことが明らかなため、上告理由とはならない。
実務上の射程
本判決は、迅速な裁判の権利侵害が直ちに無罪や免訴、あるいは判決破棄に繋がるわけではないことを示している。ただし、後に「高田事件」判決(最大法判昭47.12.20)において、異常な遅延がある場合には免訴を認める法理が確立されたため、本判決の射程は、通常の遅延の範囲内で判決内容に影響がない場合に限定して解釈すべきである。
事件番号: 昭和37(あ)1066 / 裁判年月日: 昭和37年10月26日 / 結論: 棄却
本件被告事件につき、第一審の有罪判決が言い渡され、被告人から控訴の申立をなし、第一審の大分地裁日田支部から原審の福岡高等裁判所え一件記録が送付せられる迄二年五ケ月以上を経過していること、その遅延した理由が第一審担当事務官の過失によるものであることは所論のとおりであるが右の如き事情で裁判の迅速を欠いたとしても、これにより…
事件番号: 昭和28(あ)2689 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の迅速(憲法37条1項)を欠いたとしても、それが直ちに判決に影響を及ぼす憲法違反にはならない。また、累犯加重や被告人への訴訟費用負担は、憲法39条や37条2項に反しない。 第1 事案の概要:被告人は第一審判決後、控訴審を経て上告。弁護人は、(1)原審の審理が迅速を欠き憲法37条1項に違反するこ…