判旨
控訴裁判所が量刑不当を理由に第1審判決を破棄し自判する場合、第1審判決が確定した事実に対して法令を適用すれば足り、控訴審において改めて事実を認定する必要はない。
問題の所在(論点)
量刑不当を理由に控訴裁判所が第1審判決を破棄自判する場合、控訴裁判所は自ら改めて事実認定を行う必要があるか(刑訴法400条但書の破棄自判における事実認定の要否)。
規範
刑事訴訟法に基づき、量刑不当(刑訴法381条)を理由として控訴裁判所が第1審判決を破棄し自ら判決をする(同法400条但書)場合、第1審が適法に確定した事実に依拠して法令を適用すれば足りる。この場合、控訴裁判所として独自の事実認定を行うことは不要である。
重要事実
被告人は第1審において懲役刑および罰金刑の併科を言い渡された。これに対し、弁護人は「罰金を併科したことは刑の量定が重きに失する」として量刑不当を理由に控訴した。控訴審は、第1審判決の確定した事実に変更を加えることなく、科刑が過重であると認めて第1審判決を破棄し、自ら判決(自判)を行った。被告人側は、控訴審が改めて事実認定を行わずに自判したことは手続的に違法であり、憲法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審(控訴審)は量刑不当の控訴趣意を正当と認め、第1審判決を破棄した上で、第1審判決が確定した事実に対し直接法令を適用して刑を言い渡した。第1審判決の事実認定に誤りがないことを前提として量刑の当否のみを判断する場合、その前提となる基礎事実に変更はない。したがって、第1審が認定した事実をそのまま用いることで足り、改めて証拠調べや事実認定の手続を履践しなかったとしても、訴訟法上の違法や判断遺脱は存在しない。
結論
控訴審が量刑不当により破棄自判をする際、第1審の確定事実に基づき法令を適用すれば足り、改めての事実認定は不要であるため、原判決に違法はない。
実務上の射程
控訴審の自判における事実認定の要否に関する判例である。第1審の事実認定自体に不服がない事案(量刑のみが争点となる事案)において、控訴審が事実認定を省略して自判できることの根拠として利用できる。司法試験においては、破棄自判の要件や控訴審の事後審的性格を論じる際の補強材料となる。
事件番号: 昭和33(あ)217 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
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