一 原判決は、第一審判決を破棄したが、それは事実の確定に影響を及ぼすことなき法令適用の誤りを理由としてなされたのであつた。このような場合には自判するに当つては、第一審判決の認定した事実を基礎としてこれに法令を適用することが正当であること、当裁判所の判例(昭和二六年(あ)二九四三号同二八年八月七日第二小法廷決定)の示すとおりである。 二 右の場合第一審の証拠に関する違憲の非難は、上告適法の理由にならない。
一 控訴審が第一審判決の法令適用の誤りを理由として破棄自判した場合と犯罪事実の確定 二 右の場合第一審の証拠に関する違憲の非難は上告適法の理由になるか
刑訴法380条,刑訴法397条,刑訴法400条
判旨
控訴裁判所が第一審判決に事実の確定に影響を及ぼさない法令適用の誤りがあるとして破棄自判する場合、第一審判決が認定した事実を基礎として法令を適用することは正当であり、これによって上告理由の範囲が制限されても憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が法令適用の誤りを理由に第一審判決を破棄自判する場合において、第一審が認定した事実をそのまま基礎とすることの可否、およびその結果として上告理由の範囲が制限されることが憲法に違反するか。
規範
控訴裁判所が、事実の確定に影響を及ぼさない法令適用の誤りを理由に第一審判決を破棄し、自ら判決(自判)を行う場合には、第一審判決が既に認定した事実を基礎としてこれに法令を適用することが許容される。また、上告理由の範囲をどの程度に認めるかは立法府の裁量に委ねられており、手続の帰趨により実質的に上告理由が制限される結果となっても直ちに憲法違反とはならない。
重要事実
被告人は酒税法違反等の罪で起訴され、第一審判決を受けた。控訴審(原判決)は、第一審判決に事実の確定には影響しない法令適用の誤りがあるとしてこれを破棄し、自判した。その際、原判決は改めて事実取調べを行うのではなく、第一審判決が認定した事実をそのまま前提として法令を適用した。これに対し被告人側が、第一審の事実認定を基礎とした自判は違法であり、また上告理由が狭められるため憲法に違反すると主張して上告した事案である。
あてはめ
控訴裁判所が第一審判決を破棄した理由が、証拠評価や事実誤認ではなく、専ら「事実の確定に影響を及ぼすことなき法令適用の誤り」にある場合、前提となる事実関係自体には瑕疵がない。したがって、第一審の認定事実を基礎として自判することは訴訟経済の観点からも正当である。また、このような運用により上告理由の範囲が(事実誤認等を争いにくくなることで)実質的に狭まったとしても、上告制度の具体的な設計は憲法上立法府に委ねられているため、現行刑事訴訟法の建前上、憲法違反の問題は生じないといえる。
結論
第一審の認定事実を基礎として自判することは適法であり、それにより上告理由が制約されることがあっても憲法違反ではない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の破棄自判(刑訴法400条但書等)において、第一審の事実認定を維持したまま法令適用のみを修正する場合の適法性を裏付ける判例である。答案上は、控訴審の審判範囲や自判の限界、上告理由の性質を論じる際、立法政策による制約を正当化する根拠として引用できる。
事件番号: 昭和27(あ)488 / 裁判年月日: 昭和28年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が密造者本人であると認定された事案において、法令の適用の有無や事実誤認の主張が、原審での主張を経ていない場合や前提事実を欠く場合は、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が酒税法違反(密造)の罪に問われた事案。弁護人は上告審において、(1)行為時の酒税法の規定が違憲であること…