判旨
控訴審判決が第一審判決を破棄し、自ら新たに量刑を判断して判決を言い渡す場合には、控訴理由として主張された量刑不当の点について個別に判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法に基づき、控訴審が第一審判決を破棄して自判を行う際に、被告人が主張した「量刑不当」という控訴理由に対して個別に判断を示す必要があるか(判断遺脱の有無)。
規範
控訴審において第一審判決を破棄し、自ら判決(自判)を言い渡す場合、裁判所は事件全体について改めて刑を量定する権限を有しており、その結論において量刑の適否が示されるため、被告人側の主張した量刑不当の控訴理由に対して、個別に逐一判断を与える必要はない。
重要事実
被告人が第一審判決に対し、量刑が不当に重いとして控訴を提起した。これに対し、原判決(控訴審)は第一審判決を破棄し、自ら被告人に対する量刑処断を行った。被告人側は、原判決が量刑不当の控訴理由について明示的な判断を与えなかったことを訴訟法違反として上告した。
あてはめ
本件原判決は、第一審判決を維持せず、これを破棄した上で自ら刑を言い渡している。自判を行うプロセス自体が、第一審の量刑を含めた判決内容を再検討した結果であり、新たな量刑の決定をもって控訴理由に対する実質的な回答となっている。したがって、量刑不当の主張に個別に言及しなくとも、審理不尽や判断遺脱の違法は存在しないと解される。
結論
控訴審が第一審を破棄して自ら量刑を定める場合、量刑不当の控訴理由に個別の判断を与える必要はなく、原判決に違法はない。
実務上の射程
刑事訴訟法上の「判決の理由」の程度に関する。控訴審の自判における理由不備の主張を封じる際の根拠として活用できるが、現代の訴訟実務においては、量刑不当の主張に対しても簡潔に触れることが一般的であるため、答案上は破棄自判の法的性質(再審理性)を示す材料として用いるべきである。
事件番号: 昭和27(あ)417 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
一 原判決は、第一審判決を破棄したが、それは事実の確定に影響を及ぼすことなき法令適用の誤りを理由としてなされたのであつた。このような場合には自判するに当つては、第一審判決の認定した事実を基礎としてこれに法令を適用することが正当であること、当裁判所の判例(昭和二六年(あ)二九四三号同二八年八月七日第二小法廷決定)の示すと…