第一審判決は、被告会社につき同判決別表一一の犯罪に対し、昭和二四年一二月二七日法律第二八六号による改正前の物品税法第一八条第一項を適用し、同被告を罰金六十一万五千七百円に処しているが、前記犯罪の行為は昭和二五年一月九日であるから、これに対しては右法律第二八六号附則一項により前記改正後の物品税法第一八条を適用すべきものである。従つて第一審判決はこの点において法令の適用を誤つた違法があることとなるが、改正後の物品税法第一八条第一、二項によれば前記犯罪につき被告を金五十万円以上の罰金に処し得ること明らかであるから、右第一審判決の違法は判決に影響がなく、従つてこれを理由として判決を破棄すべきものとは認められない。
改正前の法令を適用した誤が判決に影響を及ぼさない一事例
物品税法(昭和24年法律第286号による改正前)18条,物品税法(昭和24年法律第286号による改正後)18条,刑訴法379条,刑訴法411条
判旨
刑事責任を一身に負担する旨の談合に基づき作成された嘆願書の自白としての任意性は否定されず、また適用法条の誤りがあったとしても、刑罰の範囲内であれば判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
1. 責任を被る旨の談合に基づき作成された嘆願書の証拠能力(自白の任意性)。2. 適用法条に誤りがあるが、宣告された刑が正しい条文の法定刑内である場合の、判決に影響を及ぼすべき違法の有無。
規範
1. 自白の任意性(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に関し、外部的な談合等の事情のみでは直ちに不任意とは断定できず、事実関係の存否及びその作成過程から判断される。2. 判決に影響を及ぼすべき法令の違反(刑訴法410条1項、411条1号)に関し、適用すべき罰則の改正前後で誤りがあったとしても、言い渡された刑が改正後の法定刑の範囲内であれば、直ちに判決を破棄すべき理由にはならない。
重要事実
被告人は、他の重役と談合した上で刑事責任を一身に負担する旨の嘆願書を作成したが、上告審でこれが不当な自白であり無効であると主張した。また、原審は被告会社の特定の犯罪(昭和25年1月発生)に対し、改正前の物品税法を適用して罰金を科したが、本来は改正後の法を適用すべき事案であった。ただし、科された罰金額は改正後の法定刑の範囲内であった。
あてはめ
1. 嘆願書の作成過程について、被告人が主張する「談合による責任負担」の事実は記録上認められず、また原審でも認定されていないため、任意性を否定する前提を欠く。2. 法令の適用に関し、本来適用すべき改正後物品税法18条によれば、被告人を金50万円以上の罰金に処し得る。第一審が改正前規定を適用して科した罰金約61万円は、改正後の枠内においても選択し得る金額であるため、適用法条の誤りは結論に影響を及ぼさない。
結論
1. 嘆願書は証拠とすることができる。2. 適用法条の誤りは判決に影響を及ぼす違法とはいえず、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、自白の任意性を争う際は具体的な強迫や不当な働きかけの立証が必要であり、単なる内部的な談合の主張のみでは足りないことを示す。また、法令適用の誤り(特に罰則の取り違え)があっても、結論としての量刑が妥当な範囲内であれば破棄理由とならないという「判決への影響」の判断基準として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)317 / 裁判年月日: 昭和30年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみで有罪とされないためには補強証拠が必要であるが、一審判決が自白に加えて適法な補強証拠を挙示している場合には、憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事件において、第一審判決は被告人本人の自白を証拠として採用したが、それのみならず、自白内容を補強するに足りる…