原判決は昭和二六年一月四日施行された刑訴規則二四六条後段により控訴趣意書を引用したものと認められるのであつて、この場合控訴趣意書は原判決の一部をなすものではないから、右判決をなした裁判官において判決書と控訴趣意書との間に契印をなす必要はないのである。
判決書と刑訴規則第二四六条後段により引用された控訴趣意書との間には判事の契印が必要か
刑訴規則246条後段,刑訴規則58条2項
判旨
控訴裁判所が刑訴規則246条後段により控訴趣意書を引用して判決の理由を記述した場合、当該控訴趣意書は判決書の一部を構成するものではない。したがって、裁判官が判決書と引用された控訴趣意書との間に契印をなす必要はない。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が刑訴規則246条後段により控訴趣意書を引用して判決の理由を記述した場合に、裁判官において判決書と控訴趣意書との間に契印をなす必要があるか。
規範
刑事訴訟規則246条後段に基づき、控訴裁判所が控訴趣意書を引用して判決の理由を記述する場合であっても、引用された控訴趣意書自体は判決書(判決原本)の一部にはならない。そのため、判決書と控訴趣意書を一体の書類として扱うための契印等の措置は不要である。
重要事実
被告人が控訴した事件において、控訴裁判所は刑訴規則246条後段を適用し、判決の理由を記述するにあたって控訴趣意書を引用した。上告人は、判決書と引用された控訴趣意書との間に裁判官の契印がないことが、訴訟法上の不備(判例違反または憲法違反)にあたると主張して上告した。
あてはめ
昭和26年に施行された刑訴規則246条後段は、控訴審における裁判の迅速化を目的として、控訴趣意書等の引用を認めている。この引用はあくまで理由記述の簡略化の手法であり、引用された書面が物理的に判決書という公文書の一部を成す性質のものではない。本件原判決においても、同条に基づいて控訴趣意書を引用しているが、それは判決書自体の構成部分を増やす行為ではないため、契印を欠いていることは訴訟法上の違法とはいえない。
結論
判決書と控訴趣意書との間に契印をなす必要はない。本件の上告理由(判例違反、憲法違反等の主張)は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟の実務において、判決書の理由記載の簡略化手法としての「引用」がなされた際の書面形式の効力を示したものである。現在も、判決書と引用別紙との関係等に応用される法理であるが、あくまで規則上の引用に基づく結論である点に注意を要する。
事件番号: 昭和26(れ)1563 / 裁判年月日: 昭和26年10月2日 / 結論: 棄却
論旨のように公判請求書とそこに引用されている司法警察官意見書との間、又は司法警察官意見書とそこに引用されている犯罪一覧表との間に常に契印を必要とするものではない。以上のように審判の範囲は明確なのであるから公訴棄却をすべきものであるという論旨は採用できない。