論旨のように公判請求書とそこに引用されている司法警察官意見書との間、又は司法警察官意見書とそこに引用されている犯罪一覧表との間に常に契印を必要とするものではない。以上のように審判の範囲は明確なのであるから公訴棄却をすべきものであるという論旨は採用できない。
公判請求書に引用されている司法警察官意見書と犯罪一覧表との間に契印を欠くことと公訴事実の確定
旧刑訴法71条2項,旧刑訴法291条
判旨
公訴事実の特定において、公判請求書(起訴状)が司法警察官意見書等の添付書類を引用している場合、それらの書類が記録上明確に特定でき、審判の範囲が明らかであれば、各書類間に契印がなくても起訴事実の特定に欠けるところはない。
問題の所在(論点)
起訴状(公判請求書)に引用された書類との間に契印がない場合、公訴事実の特定(旧刑訴法等の規定に基づく起訴手続の有効性)に欠け、公訴棄却の事由となるか。
規範
公訴事実が特定されているか否かは、被告人の防御の範囲を画定するに足りる程度に、審判の対象が他の事実と識別できるかによって判断すべきである。起訴状において他の書類を引用する場合であっても、引用された書類が記録上の特定の書面を指すことが明らかであり、それによって審判の範囲が明確に示されているのであれば、書類間に常に契印を必要とするものではない。
重要事実
検察官が昭和23年9月21日付の公判請求書を提出した際、起訴事実の内容として「司法警察官意見書」および「買受一覧表」を引用した。しかし、これらの公判請求書と意見書の間、または意見書と一覧表の間には契印が押されていなかった。弁護人は、契印がない以上、起訴事実が不明確であり、公訴棄却すべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、公判請求書が引用する「司法警察官意見書」は本件記録第1丁にある特定の書面を指し、また「買受一覧表」も第13丁に編綴されている特定の書面を指すことが極めて明らかである。このように、引用された書類の内容が客観的に特定されており、審判の対象となる範囲が明確に画定されている以上、契印の欠如は公訴事実の特定という目的を妨げるものではない。したがって、公判請求の手続に違法はないと解される。
結論
公訴事実は特定されており、公訴棄却すべきとの主張には理由がない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
起訴状の記載における事実の特定(刑事訴訟法256条3項)に関する極めて初期の判例である。現代の実務では起訴状に別紙を合綴するのが一般的だが、形式的な契印の有無よりも、実質的に「審判の対象(範囲)」が被告人や裁判所にとって明確に識別可能かという観点を重視する姿勢を示しており、公訴事実の特定の程度を検討する際の基礎的な判断枠組みとして参照し得る。
事件番号: 昭和26(れ)207 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 破棄自判
職権により記録を調査するに、本件公判請求書(記録三四丁)によれば、被告人に対する公訴事実として「司法警察官意見書記載の犯罪事実、但(3)の事実を除く」と記載しあるところ、第一審においては右公判請求書において除外し起訴しなかつた右司法警察官の意見書記載の(3)の事実に対しても審判をなしたる上、有罪の認定をしており、そして…