記録についてみるに、原判示第三の事実認定の証拠として挙示されている証人A等に対する裁判官の各証人尋問調書によれば右各証人の尋問には検察官及び弁護人が立会つておる。右証人尋問は本件起訴後第一審第一回公判期日前に刑訴二二七条に基ずく請求によつてなされたものであるが、右各調書は差戻前の第一審第一回公判において、検察官から証拠調の請求があり、被告人は、右請求に異論なく且つ右書面を証拠とすることに同意し、検察官は之を順次朗読して裁判官に提出したことは、第一回公判調書の明記するところであり、被告人及び弁護人の出頭している差戻後の第一審公判においても適法な証拠調がなされているのであるから、各証人の証言内容について被告人がこれを知る機会を与えられていたことは明らかである。しかも、右公判において、被告人及び弁護人に証人喚問請求の機会が与えられていたにも拘わらず、何等その請求をなさず、裁判所においても、これを妨げた形跡は全然存しないのである。従つて所論憲法違反の主張はその前提たる事実を欠くものであつて理由がない。
刑訴法第二二七条による証人の供述調書を証拠とするにあたり、被告人の審問権を害しない措置がとられた場合と憲法第三七条―差戻前の公判期日では証拠とすることに同意ある場合―
憲法37条2項,刑訴法227条,刑訴法157条
判旨
第1回公判期日前の証人尋問における立会権の制限は憲法37条2項に反せず、その尋問調書も公判において適切な証拠調べと防御の機会が与えられれば証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
第1回公判期日前に行われる証人尋問(刑訴法227条・228条)において、被告人らの立会いを必須としない運用が憲法37条2項の証人審問権に反しないか。また、その際の調書を公判で証拠とすることが許されるか。
規範
刑事訴訟法228条2項が第1回公判期日前の証人尋問につき被告人・弁護人の立会いを任意とした規定は、憲法37条2項に違反しない。当該尋問調書についても、公判期日において適法な証拠調べがなされ、被告人に証言内容を知る機会および反証(証人喚問請求等)の機会が保障されている限り、その証拠能力を認めることができる。
重要事実
被告人は食糧管理法違反等で起訴された。第1回公判期日前、検察官の請求に基づき、裁判官が刑訴法227条により証人A等の尋問を実施した。この際、被告人を立ち会わせないまま尋問が行われたが、その後の公判期日において、検察官が当該尋問調書の証拠調べを請求した。これに対し、被告人および弁護人は異議なく同意し、内容も朗読された。また、被告人らには証人を別途召喚して尋問する機会も与えられていたが、その請求は行われなかった。
あてはめ
本件では、証人尋問調書が差戻前後の各第1回公判において適法に提出・朗読され、証拠調べがなされている。被告人は内容を知る機会を与えられており、これに同意していた。さらに、公判において改めて当該証人を喚問し、反対尋問を行う機会も与えられていたが、被告人側はこれを請求しなかった。したがって、立会いの機会がなかったとしても、公判における防御権の行使が妨げられた形跡はなく、憲法違反の事由は認められない。
結論
本件の証人尋問およびその調書の証拠採用は合憲かつ適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項1号)の要件に関連し、第1回公判期日前の証人尋問調書の証拠能力が争われる場面で活用できる。立会権が制限されたとしても、その後の公判で反対尋問の機会が実質的に保障されていれば、手続的瑕疵(憲法違反)とはならないとする構成において重要である。
事件番号: 昭和27(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和28年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白に対する補強証拠は、特定の明細表のみならず、証人の供述(証人尋問調書)も含めて総合的に判断されるべきであり、それらによって自白の真実性が担保されれば、憲法38条3項の補強法則を満たす。 第1 事案の概要:被告人が犯行を認める自白をしていた事案において、第一審判決は、証人Aが作成した「買…