被疑者を勾留する際に被疑事件を告げこれに関する陳述をきいた調書は、第一回の公判期日が開かれたとき裁判官から裁判所に送付すべき書類のうちに含まれない。
被疑者を勾留する際の陳述調書は第一回公判期日後裁判官から裁判所に送付すべき書類に含まれるか
刑訴法207条1項,刑訴法61条,刑訴規則39条,刑訴規則150条,刑訴規則167条1項,刑訴規則167条3項
判旨
公訴提起前の勾留に関与した裁判官が第一審の審理判決に関与することは、直ちに憲法37条1項の公平な裁判所の原則に違反しない。また、被疑者勾留時の陳述調書は公訴提起後に裁判所に送付される書類には含まれず、記録に編綴されないことは適法である。
問題の所在(論点)
1. 公訴提起前の勾留に関与した裁判官が、同一事件の第一審の審理および判決に関与することは、憲法37条1項に違反するか。2. 被疑者を勾留する際、裁判官が被疑者から聴取した陳述調書が裁判所に送付される書類に含まれず、裁判記録に編綴されないことは適法か。
規範
1. 憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗の恐れのない裁判所を指すが、予断排除の観点から公訴提起前の勾留という手続に関与した事実のみをもって、直ちに当該裁判官が審判に関与することを禁ずるものではない。2. 刑事訴訟法上、被疑者を勾留する際の陳述調書は検察官に送付されるが、起訴状一本主義との兼ね合いから、公訴提起時に裁判官に差し出すべき書類(刑訴規則167条1項)には含まれない。
重要事実
被告人が刑事事件について起訴され、第一審判決を受けた。当該第一審の審理・判決には、公訴提起前の被疑者段階において被告人の勾留を決定する手続に関与した裁判官が含まれていた。弁護人は、(1)被疑者勾留時の陳述調書が裁判記録に編綴されていないことの違法、および(2)勾留に関与した裁判官が本案審理を行うことが憲法37条1項の「公平な裁判所」に反し違憲である旨を主張して上告した。
あてはめ
1. 憲法違反について、最高裁大法廷判例(昭和25年4月12日判決)を踏襲し、勾留手続への関与のみで公平な裁判を期待できないとはいえず、違憲ではない。2. 手続上の違法について、裁判官が被疑者を勾留する際に陳述を聴取し調書を作成することは必要だが(刑訴207条1項、61条、規則39条)、当該調書は検察官へ送付されるべきものである。検察官が起訴時に提出を要するのは逮捕状・勾留状に限られ(規則167条1項)、当該陳述調書は第1回公判期日後に裁判所に送付すべき「勾留に関する処分の書類」(規則167条3項)にも含まれない。したがって、記録に編綴されていないことに違法はない。
結論
公訴提起前の勾留に関与した裁判官が第一審に関与しても違憲ではなく、また被疑者勾留時の調書が裁判所に送付されないことも法的に正当である。本件上告を棄却する。
実務上の射程
裁判官の除斥事由(刑訴法20条)を論じる際の憲法上の根拠、および予断排除原則(起訴状一本主義)との関係で、勾留段階での関与が「前審の裁判」に含まれないことの理由付けとして活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)3392 / 裁判年月日: 昭和27年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判所の構成その他において、偏頗の惧れのない裁判所を意味する。個別の訴訟手続における不服は、直ちに同条項違反を構成するものではない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が憲法37条1項に違反するとして上告を申し立てた。具体的な事実関係の詳細は判決文から…