上告趣意第二点は憲法三七条二項違反を主張するけれども、記録に徴すれば所論証人は第一審公判において被告人の審判の機会を充分与えられたものであり、控訴審において同証人の喚問申請を却下しながら、第一審における同証人の供述記載の調書を証拠とすることは、所論憲法の規定に違反するものでないことは、当裁判所判例(昭和二三年(れ)一七一八号同二四年三月三一日第一小法廷判決、判例集三巻三号三九五頁)の示すところである。論旨は理由がない。
第二審において証人申請を却下しながら、第一審における同証人の供述調書を証拠とすることの可否
憲法37条2項,刑訴法321条2項
判旨
第一審公判において被告人に十分な反対尋問の機会が与えられた証人につき、控訴審で再度の喚問申請を却下し、第一審の供述調書を証拠としても憲法37条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
第一審で尋問機会があった証人について、控訴審が再喚問申請を却下し、第一審の供述調書を証拠とすることが、憲法37条2項(被告人の証人審問権)に反するか。
規範
被告人に証人尋問の機会が十分に与えられていた場合には、その後の審級において当該証人の喚問申請を却下した上で、既に作成されている第一審公判等の供述調書を証拠として採用したとしても、憲法37条2項の証人審問権を侵害するものではない。
重要事実
被告人は第一審公判において、特定の証人に対して審問する機会を十分に与えられていた。その後、控訴審において弁護人が同証人の再度の喚問を申請したが、裁判所はこれを却下した。裁判所は、第一審における当該証人の供述を記載した調書を証拠として採用し、有罪判決の基礎とした。被告人側はこれが憲法37条2項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、問題となった証人は第一審公判において被告人の審問の機会が十分に与えられていたものである。このような場合、被告人の防禦権の行使としての証人審問権は既に実質的に保障されているといえる。したがって、控訴審において改めて同一証人の喚問申請を却下した上で、既に適法に作成された第一審の供述調書を証拠として用いることは、被告人の権利を不当に制限するものではないと解される。
結論
控訴審における証人喚問申請の却下および第一審供述調書の証拠採用は、憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項2号等)や証人採否の裁量に関する議論において、憲法上の要請(審問権)との調整を図る際の根拠として用いる。一度十分な反対尋問の機会が与えられたのであれば、重ねて尋問権を保障する必要はないという「反対尋問の機会の保障」の法理を端的に示すものである。
事件番号: 昭和26(あ)3075 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官作成の供述調書について、第一審の公判準備期日において供述者を証人として尋問し、被告人及び弁護人を立ち会わせて十分に審問する機会を与えた場合には、憲法37条2項の証人審問権を侵害するものではない。 第1 事案の概要:第一審裁判所は、検察官作成の各供述調書を採用するにあたり、公判準備期日において…