判旨
原審で主張・判断されていない事項に関する違憲の主張は、適法な上告理由に当たらない。また、自白の強制が主張されたとしても、上告審が当然に新たな事実取調べを行う義務を負うものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法における適法な上告理由の範囲、特に原審で主張されていない違憲主張の可否、および自白の任意性が争われた際の上告審における事実取調べ義務の有無が問題となる。
規範
1. 憲法違反を理由とする上告について、原審における主張および判断を経ていない事項は、適法な上告理由とはならない。2. 上告審において自白の強制がある旨の主張がなされた場合であっても、裁判所が当然に事実の取調べを行わなければならないものではない。
重要事実
被告人側は、上告審において新たに強制による自白があった旨の違憲主張を行い、上告審裁判所はその点について事実の取調べを行うべきであると主張した。しかし、当該事案の記録上、所論のような強制の事実は認められず、また原審においても当該事項についての判断はなされていなかった。
あてはめ
本件において弁護人が主張する違憲の事由は、原審での主張・判断を経ていない。上告審は事後審としての性格を有するため、原審に現れていない新事項を前提とする主張は適法な理由とはいえない。また、記録を精査しても自白の強制を裏付ける事実は認められず、主張があるという一事をもって直ちに事実取調べを強制する法的根拠もないため、上告理由には当たらないと解される。
結論
本件上告は、適法な上告理由にあたらない事項を主張するものであるため、棄却されるべきである。
実務上の射程
上告審の事後審構造を再確認する判例である。答案上では、憲法違反や重大な事実誤認(刑訴法411条等)を主張する際の前提として、原審での主張・判断の有無が上告理由の適法性に影響すること、および上告審における事実取調べの裁量性を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5514 / 裁判年月日: 昭和29年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項に基づき自白の任意性を争う場合であっても、強制によるものと認めるべき証跡がない限り、当該自白の証拠能力を否定することはできない。 第1 事案の概要:被告人が自白の任意性を争い、憲法38条2項違反および刑事訴訟法違反を主張して上告した事案。弁護人は、被告人の供述や自白が強制によるもので…
事件番号: 昭和28(あ)1420 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する勾留の不法は、それ自体が原判決自体の違法を構成するものではなく、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反および判例違反等を理由に上告した事案。上告趣意において、事実誤認や証拠取捨選択の不当を主張するとともに、被告人は勾留の不法を訴え、これを理由として…