判旨
貸金業等の取締に関する法律にいう「貸金業」とは、反復継続の意思をもって金銭の貸付け等を行えば足り、報酬や利益を得る意思、または現にこれを得た事実は必要ない。
問題の所在(論点)
1. 貸金業の成立に「報酬や利益を得る意思(営利性)」が必要か。 2. 法律の不知(違法の認識の欠如)が犯意の成立を妨げるか。
規範
「貸金業」とは、反復継続の意思をもって金銭の貸付けまたは金銭の貸借の媒介をする行為を指す。営利の目的、すなわち報酬や利益を得る意思、あるいは現に利益を得たという事実は、貸金業の成立に必須の要件ではない。
重要事実
被告人が金銭の貸付けを行った行為が、貸金業等の取締に関する法律(当時)2条にいう「貸金業」に該当するかが争われた。被告人は、無利息の貸付けは同法に触れないと誤信しており、利益を得る意思がなかったこと、および違法の認識を欠いていたことを主張して上告した。
あてはめ
1. 貸金業の定義については、法が「反復継続の意思」を重視しており、利益の有無は規定の適用を左右しない。したがって、無利息であっても反復継続して貸し付ける意思があれば「貸金業」に該当するといえる。 2. 違法の認識については、判例の確立した見解によれば、自己の行為が法に触れるという認識(違法の認識)は犯意(故意)の成立要件ではない。したがって、無利息であれば適法であると誤信していたとしても、処罰を免れることはできない。
結論
被告人の行為は貸金業に該当し、違法の認識を欠いていても犯意は成立するため、有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
行政刑法や取締法規における「業」の解釈において、営利性が必須ではないことを示す重要判例である。また、刑法38条3項ただし書の解釈に関連し、違法の認識の要否に関する古典的な判例法理(不要説)を再認するものとして位置づけられる。
事件番号: 昭和28(あ)2460 / 裁判年月日: 昭和29年4月8日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律にいわゆる「貸金業」とは、反覆継続して行う意思の下に金銭の貸付又は金銭貸借の媒介行為を行うことをいい、利を図ることはその要件でない。
事件番号: 昭和28(あ)601 / 裁判年月日: 昭和30年4月22日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律第二条にいう「貸金業」の意義は当裁判所の判例(昭和二六年(あ)第八五三号同二九年一一月二四日大法廷判決)のとおりであつて客観的に観察して貸金業としての形態を備えることは右「貸金業」の要件には属しない。
事件番号: 昭和28(あ)756 / 裁判年月日: 昭和29年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律2条にいう「貸金業」に該当するためには、必ずしも報酬や利益を得る意思、または現に利益を得た事実は必要ではない。 第1 事案の概要:被告人が「貸金業等の取締に関する法律」2条に規定される「貸金業」を営んでいたとして起訴された事案において、被告人側が「報酬や利益を得る意思がな…
事件番号: 昭和26(あ)853 / 裁判年月日: 昭和29年11月24日 / 結論: 棄却
一 貸金業等の取締に関する法律二条第一項にいう「貸金業」とは反覆、継続の意思をもつて金銭の貸付又は金銭の貸借の媒介をする行為をすれば足り必ずしも報酬若しくは利益を得る意思またはこれを得た事実を必要とするものではない。 二 貸金業等の取締に関する法律第一八条第一号の規定は職業選択の自由について規定した憲法第二二条に違反し…
事件番号: 昭和28(あ)2226 / 裁判年月日: 昭和28年9月10日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律二条にいわゆる貸金業とは反覆継続の意思を以て金銭の貸付又は金銭の貸借を媒介することを指すものであり、(昭和二六年(あ)二七〇二号、同二八年二月三日第三小法廷決定参照)、必ずしも所論のように「普段の収入の源泉となす意思を以て」それらの行為をなした場合に限るべきいわれはない。