証人尋問期日通知書の送達が不適法であつたため弁護人が出頭できなかつた違法があつたとしても、原審第二回公判期日に所論の各証人尋問調書は朗読されており、これに対し弁護人から何らの請求も異議の申立もなされておらず、却つて弁護人において尋問調書を弁論に援用しているのであるから、右違法は判決に影響を及ぼすものとは認められないのであつて、所論は理由がない。
証人尋問期日通知書の送達の不適法と憲法第三七条第二項(証人尋問期日通知書の送達に関する違背とその治癒)
憲法37条2項,刑訴法157条,刑訴法393条,刑訴法411条1号
判旨
証拠調べの過程で手続上の違法があったとしても、その後の公判期日において証拠として朗読され、弁護人が異議を申し立てず、かえって当該証拠を弁論に援用した場合には、当該違法は判決に影響を及ぼすものとは認められない。
問題の所在(論点)
証拠調べ手続に何らかの違法が存在する場合において、その後の公判期日で弁護人が当該証拠を異議なく受け入れ、かつ弁論に援用したとき、当該違法を理由として判決を破棄することができるか(判決に影響を及ぼすべき法令違反の有無)。
規範
証拠調べ手続に違法がある場合であっても、公判廷において適法な証拠調べ手続(朗読等)が履践され、かつ当事者がこれに異議を述べず、むしろ積極的に当該証拠を利用(援用)したときは、手続上の瑕疵は治癒されるか、あるいは「判決に影響を及ぼすべき著しい法令の違反」(刑事訴訟法410条1項柱書、現行379条参照)には当たらない。
重要事実
被告人の弁護人は、第一審ないし控訴審における証人尋問調書等の証拠調べ手続に違憲・違法があると主張して上告した。しかし、記録によれば、原審(控訴審)第2回公判期日において当該証人尋問調書は朗読されており、これに対して弁護人から証拠請求に関する異議や申立てはなされていなかった。むしろ、弁護人は自ら当該尋問調書を弁論において援用していた。
あてはめ
本件において、所論のような手続上の違法が仮にあったとしても、原審公判期日において当該証拠の朗読がなされ、適法に証拠の内容が顕出されている。弁護人はこれに対し異議を申し立てる機会があったにもかかわらずこれを行わず、かえって自ら証拠として援用して自己に有利な弁論に供している。このような訴訟態様に照らせば、当初の手続的違法が被告人の防御権を実質的に侵害したとはいえず、判決の結果を左右するような重大な瑕疵には至っていないと評価される。
結論
手続上の違法は判決に影響を及ぼすものとは認められないため、上告理由には当たらない。
実務上の射程
伝聞証拠の同意や証拠調べの異議(刑事訴訟法309条)に関連し、瑕疵の治癒や異議権の放棄を肯定する論拠として機能する。特に、当事者が積極的に証拠として利用した事実(援用)がある場合、後の段階でその適法性を争うことは信義則上も許容されにくいという、訴訟経済と手続の安定性を重視する判断枠組みである。
事件番号: 昭和29(あ)1750 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審裁判所は証人申請の取捨選択について合理的な裁量権を有しており、必要性がないと判断される証人尋問を行わないことは違法ではない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が第一審において証人の呼出し・尋問を申請したが、裁判所がこれを却下した。弁護人は、この証拠調べの却下が訴訟手続の違法であるとして上告を…